山林を相続したとき、相続税はどうなる? 山林の相続税評価方法を解説

山林

不動産の相続と言えば、自宅や賃貸マンションなどの土地・建物が頭に浮かぶでしょう。しかし、それ以外にもいろいろな不動産があり、そのひとつが「山林」です。相続財産を確認していたところ、遺産に山林が含まれていたというケースもあります。

山林は「山奥にあり評価額が低そうだし、相続にはあまり影響がないだろう」という印象を持つ方がいると思いますが、評価額の計算方法は複雑で、想像以上に高い評価になることもあります。

今回は、相続税に関する山林の評価について、ルールや評価方法を解説します。

1.山林の区分

土地は、不動産の一種であり、相続税などの課税対象となるものです。ただ、同じ土地でも、その土地の現況や利用目的によって、細かい分類がなされています。土地の種類は、「不動産登記事務取扱手続準則」で23種類に分類されており、山林はそのひとつで「耕作の方法によらないで竹木の生育する土地」と定義されています。

ただ、山林と言っても、どのような場所にあるかで、相続税や固定資産税の基準となる評価額が変わってきます。まずは、山林の種類について確認しましょう。

1-1.純山林

純山林は、通常の林業経営のための林地で、市街地から遠く離れた場所にあり、宅地の影響をほとんど受けない山林です。山林は宅地に転用することもできる土地ですが、純山林は、市街地から遠く離れていて宅地に転用することが難しい山林だと言えます。

1-2.中間山林

中間山林は、市街地付近又は別荘地帯等にある山林で、通常の純山林と状況を異にする山林です。

1-3.市街地山林

市街地山林は、宅地のうちに介在する山林、市街化区域内にある山林などです。宅地への転用がしやすい山林であるため、後述する財産評価においても、宅地の影響を受けることになります。

1-4.どの山林にあたるかを確認する方法

所有している山林が、純山林・中間山林・市街地山林のいずれに該当するかは、国税庁が公表している「評価倍率表(https://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm)」で確認できます。

市区町村ごとに評価倍率表があり、町名ごとに評価方式が掲載されています。

該当地域にある山林が純山林として評価される場合は「純」、中間山林の場合は「中」、市街地山林の場合は「比準」または「市比準」と書かれています。

なお、所有している土地が山林にあたるかは、登記簿謄本の表題部にある「地目」で確認できます。

2.山林の評価単位

土地には1筆ごとに「地番」がつけられています。地番は、登記管理用の番号であり、住所とは異なるものです。1つの住所であっても、登記上は複数の地番がセットになった土地という場合もあります。

土地の評価は、1筆(=地番)ごとに行う場合と、複数の地番をまとめた「利用単位」で行う場合がありますが、山林の種類によって評価単位が異なります。

2-1.純山林・中間山林

純山林と中間山林は、1筆の山林ごとに評価します。

2-2.市街地山林

市街地山林は、「利用の単位となっている一団の山林」ごとに評価されます。これは宅地と同じ評価方法です。

3.山林の評価

土地の評価額と言えば、公示価格や路線価をイメージする人が多いでしょう。しかし、公示価格や路線価は全ての土地に定められているものではありません。

山林の場合は、公示価格や路線価がない場所であることがほとんどです。その場合は、固定資産税評価額に所定の倍率をかける「倍率方式」、または、近隣の宅地などの評価額を参考にする「宅地比準方式」で評価額を決定します。

どの方式で決定されるかは、評価単位と同様に、純山林・中間山林と市街地山林とで異なっています。

3-1.純山林・中間山林

純山林と中間山林は、倍率方式で評価されます。

純山林・中間山林の評価額=固定資産税評価額×倍率

倍率は、売買実例価額や精通者意見価格などをもとにして、地域ごとに定められます。所有する山林の倍率がいくらになるかは、「評価倍率表」で確認できます。

【計算例】

それぞれ異なる場所に、3筆の山林を所有している場合

土地 固定資産税評価額 倍率 相続時の評価額
A 50万円 12倍 600万円
B 100万円 2.5倍 250万円
C 200万円 3.3倍 660万円

上記の例の場合、土地Aについて、固定資産税評価額が低いにもかかわらず、倍率が高くて、相続時の評価額が土地Cと近い金額になっています。

同じ純山林・中間山林であっても、市街地に近い場所などでは、そうでない山林よりも高い倍率が設定されていることがあります。

3-2.市街地山林

市街地山林の評価は、宅地比準方式または倍率方式となっています。原則として宅地比準方式で計算されますが、市街地山林であっても、倍率方式で評価を行う地域とされている場合は、評価倍率表に記載されている倍率を用いて、倍率方式で評価します。

宅地比準方式は、その言葉通り、宅地と比較しながら価格を評価する方式です。具体的には、「その山林を宅地に転用した場合」という考え方で評価します。

宅地比準方式での市街地山林の評価額=宅地として評価した場合の評価額-宅地に転用するための造成費用

【計算例】

2筆の山林だが、利用単位としては一体の山林を所有している場合

土地
(筆単位)
面積 利用単位
での面積
宅地での
評価額
造成費用 相続時の
評価額
A 100㎡ 150㎡ 15万円/㎡ 5万円/㎡ 1,500万円
B 50㎡

 

3-3.市街地山林を純山林として評価する要件

市街地山林は、宅地に転用しやすい土地であるため、上記のような宅地比準方式で評価するルールになっています。しかし、市街地山林であっても、宅地への転用ができない場合があります。

市街地山林で「宅地への転用が見込めないと認められる場合」には、「近隣の純山林の価額に比準して」評価するとされています。

「宅地への転用が見込めないと認められる場合」として、次の2パターンが挙げられています。

①「宅地比準方式で評価した場合の価額」が「近隣の純山林の価額に比準して評価した価額」を下回る場合

宅地転用するための造成は可能だが、評価額に対して造成費用が高くなってしまう山林の場合、このパターンに該当することがあります。

②その山林が急傾斜地等であるために宅地造成ができないと認められる場合

そもそも、その山林を宅地造成することができない場合に適用されます。

4.利用等の制限を受ける山林の評価

山林によっては、森林法などの法律によって利用に制限を受けるものがあります。また、賃借権が設定されているなど、山林の評価額すべてを所有者に帰属させるべきでないケースもあります。

そういった場合には、原則の評価方法に調整が加えられます。

4-1.保安林

「保安林」とは、森林法その他の法令の規定によって、土地の利用や立木の伐採について制限を受けている山林です。これは、災害の防止や森林機能の維持などを目的としているものです。

保安林になっている山林は、下記のように評価します。

保安林等の山林の評価額=山林が保安林等でないものとした場合の評価額×(1−保安林等の立木の控除割合)

控除割合:伐採の禁止・制限度合いに応じて、0.3から0.8の範囲で定められる

なお、立木の評価額は、樹種・立木度・地利級などによって計算した金額となりますが、非常に複雑であるため、ここでは割愛します。

4-2.特別緑地保全地区内にある山林

「特別緑地保全地区」とは、都市緑地法第12条に定められているものです(首都圏近郊緑地保全法及び近畿圏の保全区域の整備に関する法律に規定する近郊緑地特別保全地区を含みます。)。特別緑地保全地区として指定されるのは、下記のようなものです。

  • 無秩序な市街地化や公害・災害を防止するために必要な遮断地帯・緩衝地帯・避難地帯など
  • 地域において伝統的・文化的意義を有するもの
  • 風致または景観が優れている、または、動植物の生息地・生育地として保全する必要があり、住民の生活環境を確保するために必要なもの

この特別緑地保全地区にある山林は、下記のように評価します。

特別緑地保全地区内にある山林の評価額=原則通りに計算した評価額×(1-0.8)

ただし、特別緑地保全地区内にある山林であっても、「林業を営むための立木の伐採が認められている純山林」に該当するものは対象外で、原則通りの計算方法で評価されます。

4-3.貸し付けられている山林

貸し付けられて、賃借権や地上権等が定められている場合は、下記のような評価がなされます。

①賃借権

賃借権の目的となっている山林の評価額=原則通りに計算した評価額-賃借権の価額

賃借権の評価額は、下記のように評価します。

  • 純山林:賃借権の残存期間に応じて地上権の評価に準じて評価
  • 中間山林:賃貸借契約の内容や利用状況に応じて、純山林又は市街地山林のいずれかの方法で評価
  • 市街地山林:その山林の付近にある宅地に係る借地権の価額等を参酌して評価

②地上権

地上権の目的となっている山林の評価額=自用地としての評価額-地上権の価額

地上権の価額は、相続税法または地価税法の規定によります。

③区分地上権

区分地上権の目的となっている山林の評価額=自用地としての評価額-区分地上権の価額

区分地上権の価額=自用地としての評価額×区分地上権割合(契約内容に応じた土地利用制限率を基とした割合)

④区分地上権に準ずる地役権

区分地上権に準ずる地役権の目的となっている山林の評価額=承役地である山林の自用地としての評価額-地役権の価額

地役権の価額=承役地である山林の自用地としての評価額×区分地上権に準ずる地役権の割合(契約内容に応じた土地利用制限率を基とした割合)

4-4.権利が設定されている山林(土地の上に存する権利が競合する場合の山林)

1筆の土地に、賃借権や地上権が重複(競合)して設定されていることがあります。その場合は、権利の組み合わせによって、下記のような計算式で評価されます。

①「賃借権または地上権」と「区分地上権」が競合している場合

自用地としての評価額-(区分地上権の価額+賃借権または地上権の価額)

②「区分地上権」と「区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地」が競合している場合

自用地としての評価額-(区分地上権の価額+区分地上権に準ずる地役権の価額)

③「賃借権または地上権」と「区分地上権に準ずる地役権地役権の目的となっている承役地」が競合している場合

自用地としての評価額-(区分地上権に準ずる地役権の価額+賃借権または地上権の価額)

4-5.分収林契約に基づいて貸し付けられている山林

分収林契約とは、「立木の伐採または譲渡による収益を、一定の割合により分収することを目的として締結された契約」を指します。「分収造林契約」や「分収育林契約」と呼ばれることもあります。

分収林契約に基づいて貸し付けられている山林の評価額は、下記の計算式で求められます。

分収林契約によって貸し付けられている山林の評価額=A×B+(A-C)×(1-B)

A:その山林の自用地としての評価額

B:山林所有者の分収割合

C:地上権または賃借権の価額

5.山林を相続した場合の手続き

山林は、使いみちがなくてそのまま放置されていることも少なくないでしょう。しかし、土地の一種であり、相続の対象となる財産です。しかし、これまで解説してきたように、山林の評価方法は、利用状況などによっては非常に複雑なものになっており、どれくらいの相続税負担になるかを計算するためには専門知識が不可欠です。

相続放棄をすることも可能ですが、特定の財産の相続だけを放棄することはできないので、相続放棄した方がいいかを考えるためにも、山林の評価を正しく行わなければ判断できません。

使う予定がないため、相続税の納付にあたって、山林を物納したいという方もいるかもしれません。不動産は一定の条件を満たせば物納可能ですが、山林を物納するにあたってハードルになるのが、「境界が明らかでない土地」に該当しないかどうかです。

山林は、評価額が低くても面積が大きく、土地家屋調査士などに測量してもらうとしても、時間も費用も莫大になってしまう可能性があります。

6.まとめ

山林は、場所などによって「純山林」「中間山林」「市街地山林」に分類されます。分類によって、土地の評価単位や評価方法が異なってきます。保安林などに指定されている場合や、賃借権・地上権などが設定されている場合は、評価額の算定が非常に困難です。

相続にあたって、正確な税額を計算するためには、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

ただ、相続するかどうかの意思決定や納税・申告までの期限を考えると、相続が開始してからの相談では、とてもあわただしくなってしまう可能性もあります。相続財産に山林が含まれていることが分かった場合は、生前のうちから税理士などに相談して、相続に備えておくことが重要です。

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