住宅取得資金贈与の特例とは? 制度内容や申請方法について解説

住宅を購入する際、その費用を自己資金以外で賄う方法は主に2つあります。1つは住宅ローン契約、もう1つは親や祖父母からの資金援助です。

本記事をご覧の方の多くは、後者を利用した住宅購入を予定していることでしょう。
ただ、何千万にも及ぶ資金を一度に譲り受けるとなると、贈与税がどれほどかかるか不安になりますよね。

そこで今回は、2026年末まで利用可能な「住宅取得資金贈与の特例」について解説します。
この制度を利用すると、贈与税のみならず相続税の軽減にもつながりますから、興味のある方はぜひご一読ください。

1.住宅取得資金は一定額まで贈与税が非課税になります!

住宅取得資金贈与の特例」を利用すると、所定の金額までは贈与税が免除されます。

特例の詳細については後述するとして、まずは「住宅取得資金」がどういうものなのかを見ていきましょう。

1-1.住宅取得資金贈与とは何か

まず住宅取得資金とは、住宅の新築や購入、および増改築などに充てる費用のことです。
この費用を他者が提供した資金で賄うと、住宅取得資金贈与が発生したことになります。
贈与が発生するということは、贈与税が課されるということです。

そのため、住宅取得資金贈与を受けたら、贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日までに贈与税を申告しなければいけません。

ただし、わざわざ個別の名称がつけられている点から分かる通り、住宅取得資金贈与は、他の贈与とは色々と仕組みが異なります。

1-2.なぜ住宅取得資金贈与が重要なのか

住宅取得資金贈与に関する知識は、今の時代、必ず身につけておきたいものです。
というのも、少子高齢化に伴い、被相続人一人あたりの相続人数は着実に少なくなってきています。

財産を分割する必要性が薄くなれば、それだけ生前贈与のハードルも下がります。
子が住宅購入を希望した際、生前贈与の一環として資金援助を行う親は、これからますます増えていくことでしょう。

実際、「住宅取得資金贈与の特例」は本来であれば2021年に終わる予定でしたが、高齢化のあおりを受けてか、適用期間が再三延長されています。

2.贈与の基本

続いては、税務における「贈与」の意味、および贈与税の基本的な仕組みについて解説します。

2-1.贈与とは何か?

贈与とは、贈与者が自身の財産を、受贈者に無償で提供する行為です。

住宅購入の場合は先述の通り、購入費用を他者の資金援助で賄うことが贈与に該当します。
これが個人間で行われた場合に、贈与税というものが発生します。(企業間の場合は法人税扱い)

また、税務における贈与の注意点として、「みなし贈与」の存在が挙げられます。
みなし贈与とは、財産の提供が有償だったとしても、取引価格次第で贈与に含めるというものです。

取引価格の基準は法律に明記されていないものの、過去の判例では、受贈側の自己負担が80%未満という理由でみなし贈与が認定されています。

贈与が発生したら先述の通り、贈与を受けた翌年に受贈者本人が確定申告を行わなければいけません。

ただし、贈与を受ける=贈与税が発生するというわけではなく、年間の受贈金額が基礎控除(110万円)以内であれば、申告や納税は不要です。

2-2.贈与税の種類

贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税制度」の2種類があり、それぞれ税率や申告の流れが異なります。

以下で詳しく見ていきましょう。

2-3.暦年課税

暦年課税とは、年間の受贈金額から基礎控除110万円を除いたお金に、累進課税を適用する制度です。

累進課税では、受贈金額から基礎控除を除いた金額に応じて、税率が10~55%に分かれています。

これらを含めた、暦年課税の計算式は以下の通りです。

(贈与税)=(年間受贈金額-110万円)×(税率)―(追加控除額)

受贈金額ごとの税率や追加控除額は、贈与者の属性によって変わります。

例えば、贈与額4,000万円の場合、

贈与者が受贈者の直系尊属(親や祖父母)であれば、贈与税率が50%(追加控除額415万円)、一方で贈与者が直系尊属に該当しない場合は、贈与税率が55%(追加控除額400万円)まで増加します。

そのため、住宅取得資金を親や祖父母以外の人から譲り受けるのは、あまりおすすめできません。

なお、のちに相続税の申告をする際は、相続開始3年前までの贈与額全額、および4~7年前の贈与額の合計額から100万円を控除した額を相続財産に加える必要があります。

該当期間中に納付した贈与税は相続税から控除されますが、贈与税>相続税の場合は、超える部分の還付を受けることは出来ません。

2-4.相続時精算課税

相続時精算課税は、原則として①贈与者が贈与の年の1月1日において60歳以上であり②受贈者自身が18歳以上で、かつ、贈与時において贈与者の直系卑属である推定相続人又は孫である場合に利用することができます。一度相続時精算課税制度を選択した場合、その後同じ贈与者からの贈与について暦年課税制度へ変更することは出来ません。

相続時精算課税を選択した受贈者が2024年1月1日以後に贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については暦年贈与の基礎控除とは別に贈与税の課税価格から基礎控除額110万円が控除されます。

また特定贈与者(相続時精算課税の選択に係る贈与者を言い、令和5年分以前の贈与税の申告で相続時精算課税を選択した場合も含む)の死亡に係る相続税の課税価格に加算されるその特例贈与者から2024年1月1日以後に贈与により取得した財産の価格は基礎控除額を控除した後の残高とされています。

相続時精算課税を選択するには、贈与税の申告書の提出期限内に「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。贈与税の申告書を提出する必要がある場合にはこの届出書を申告書に添付する必要があります。

3.住宅取得等資金の贈与税の特例とは?

住宅取得資金にかかわる贈与税の特例は、住宅の新築や購入、および増改築などにおいて、直系尊属から贈与を受けた場合に適用されます。

以下で詳しく見ていきましょう。

3-1.贈与者と受取人との関係

住宅取得資金の贈与税の特例は、贈与者と受取人の関係が、親子もしくは祖父母と孫の場合に適用するのが基本です。

もちろん、生きてさえいれば、曾祖父母からの贈与も対象となります。

ただし、特例を利用するには、受贈者の年齢が、受贈した年の1月1日時点で18歳以上でなければいけません。

また、特例の対象となる贈与者は受贈者本人の直系尊属のみであり、配偶者の親や祖父母は対象外です。

3-2.贈与の対象となる住宅の条件

住宅取得資金の贈与税の特例において、対象となる住宅は「省エネ等住宅」と「一般住宅」に分類されます。

省エネ等住宅に分類される条件は、以下の4点のいずれかに当てはまることです。

  1. 断熱性能等級4以上
  2. 一次エネルギー消費量等級4以上
  3. 耐震等級2以上ないし免振建築物
  4. 高齢者等配慮対策等級3以上

断熱性能と一次エネルギー消費量に関しては、2025年より等級4以上が義務化されます。

それに先駆けて、2024年4月より省エネ等住宅の認定に必要な等級も上がりますが、それについては後述します。

なお、一般住宅の区分で特例を利用する場合も、最低限その住宅が、1982年以降に建築されたものでなければいけません。

以上を確認し終えたら、最後に受贈者の年収と対象住宅の床面積をチェックしましょう。

通常は、受贈年度の合計所得が2,000万円以下の人が、特例の対象者です。

しかし、購入する住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、所得条件が1,000万円以下まで下がります。

3-3.非課税限度枠

住宅取得資金の贈与税の特例は、先述の住宅の分類によって非課税限度枠が異なります。
具体的には、省エネ等住宅が1,000万円、一般住宅が500万円です。
以前は一般住宅・省エネ等住宅ともに、更なる高額控除が可能となっていましたが、2021年12月の法改正によって減額されました。
非課税枠は減ってしまったものの、消費税による区分けがなくなった分、申告作業の手間が省けた形です。

ただし、特例を適用するにあたっては、贈与税が0円でも申告が必要となるので注意してください。

4.令和6年度の改正についても確認しましょう

2023年12月に発表された「令和6年度 税制改正大綱」では、住宅取得資金の贈与税の特例について様々な制度改正がなされました。

まず、この特例は期間限定の制度であり、本来の期限は令和5年12月末です。

これが制度改正によって、3年後の令和8年12月末まで延長されています。

次に、省エネ等住宅の認定条件のうち、断熱性能が等級5、一次エネルギー消費量が等級6にそれぞれ引き上げられています。

また、断熱性能等級と一次エネルギー消費量等級は、同時に条件を満たさなければ、省エネ等住宅に認定されないようになりました。

なお、2021年に減額された非課税限度枠については、令和6年度の改正では特に変更されていません。

5.住宅取得資金贈与の特例を使用する時の注意点

最後に、住宅取得資金贈与の特例を利用する際に、押さえておきたいポイントを2点解説します。

5-1.相続時精算課税制度も併用できる

住宅取得資金の贈与税の特例は、暦年課税の場合はもちろん、相続時精算課税においても利用可能です。

どちらの課税方式が贈与税をより節約できるかは、場合によって異なります。

それぞれの計算例を以下で見ていきましょう。初めて贈与を受けるケースで考えてみます。

まずは、贈与金額を5,000万円、非課税限度枠を1,000万円とそれぞれ仮定します。

相続時精算課税

課税評価額=5,000万円-非課税枠1,000万円=4,000万円

納税額=(4,000万円-110万円-2500万円)×20%=278万円

暦年課税

課税評価額=5,000万円-非課税枠1,000万円-基礎控除110万円=3,890万円

納税額=3,890万円×50%-415万円=1,530万円

続いては、贈与金額のみ2,000万円に変更して再計算します。

相続時精算課税

課税評価額=2,000万円-非課税枠1,000万円=1,000万円

納税額=1,000万円-110万円=890万円<2500万円 →税額は0円

暦年課税

課税評価額=2,000万円-非課税枠1,000万円-基礎控除110万円=890万円

納税額=890万円×30%-控除90万円=177万円

住宅取得資金の贈与を受ける際は、必ず両方の課税方式で納税額を計算してから、相続時精算課税選択届出書を出すかどうかを判断してください。

5-2.贈与税の納付は不要でも申告は必要

住宅取得資金の贈与税の特例をはじめ、税制上の各種特別控除を利用する際は、納税額が0円であっても確定申告が必要です。

これを怠ると、特別控除が適用されないことに加え、控除前の税額を基準とした無申告加算税が課されてしまいます。

申告のスケジュールは随時確認しておくよう心がけてください。

まとめ

以上、住宅取得資金贈与について、親や祖父母から贈与を受けた場合の特例を紹介しました。

贈与税の計算や手続きに少しでも行き詰まりを感じた際は、ぜひ気軽にランドマーク税理士法人にご相談ください。

 

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