家の相続をするために知っておきたい手続きの流れや相続税の仕組みを徹底解説

被相続人の財産を相続する場合、財産の金額面でも手続き面でも、ひいては今後の生活面でも大きなものが「家(不動産)」です。家の相続を考える場合には、被相続人の財産全体を相続する手続きについても一緒に考えなければならないためです。
相続税の申告までの10か月という短い期間で、遺産分割協議から税額の計算・特例の適用など、さまざまなことを考えなければなりません。
そこで今回は、相続全体の流れと合わせて、家を相続するときに知っておくべき手続きについて解説しました。

 

1.家を相続するときの流れ

家を相続すると言っても、「家だけ」を相続するのではなく、「被相続人の財産全体の相続を行い、その中に家も含まれる」という形になります。そのため、家を相続するときの流れは、相続全体の流れとセットで考えなえればなりません。

相続全体の流れと家の相続の流れをまとめると、下記のようになります。

①遺言書の有無の確認と死亡届の提出

被相続人が亡くなってから相続が開始しますが、相続にあたって、遺言書があるかどうかを確認してください。また、市区町村への死亡届の提出も忘れないようにしましょう。

②遺産分割の協議を行う

被相続人の財産や債務をすべて確認してから、遺産分割の協議を行いましょう。遺言書があり、その通りに分割するのであれば時間はかかりませんが、そうでない場合は協議に時間がかかる可能性があるので、後回しにせず早くから取りかかるのがポイントです。

なお、遺言書がある場合でも、相続人全員が同意していれば、遺言書とは異なる遺産分割を行っても構いません。

③相続税の申告(必要な場合のみ)

相続財産が基礎控除額(後述)を超えている場合は、相続税の申告が必要です。特例を適用して納税しなくてよい場合も、その旨を記載した申告が必要な点には気をつけてください。

相続税の申告期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」です。

④家の名義変更

遺産分割協議の終了後、できるだけ早いタイミングで家の名義変更をしておきましょう。具体的には、管轄の法務局で相続登記を行います。ただ、必要な書類が多いので、準備は早めにしておきましょう。

 

2.家を相続する方法

家を誰が相続するかということを理解するために、まずは、法律上定められた相続人について説明します。その上で、被相続人の財産を分割する際、家を誰がどのような形で引き継ぐのかという基準で分類できる4つの相続方法について解説します。

 

2-1.法定相続人と法定相続割合

被相続人が遺言書を残していなかった場合は、民法に定められている法定相続人の間で遺産分割協議を行うことになりますが、その際の目安として法定相続割合が定められています。法定相続人になることができるのは配偶者・子ども・直系尊属・兄弟姉妹のみですが、法定相続人になれる順位があります。配偶者は常に法定相続人になり、配偶者以外は次の順位で相続人になります。

第1順位:死亡した人の子ども

第2順位:死亡した人の直系尊属(父母、祖父母等)

第3順位:死亡した人の兄弟姉妹

直系尊属や兄弟姉妹は、より優先順位の高い法定相続人がいる場合には法定相続人にはなれません。

 

①配偶者がいて子どもがいる場合

法定相続人は「配偶者と子」で、配偶者が1/2、子どもが1/2の財産を引き継ぎます。子どもが複数人いる場合は、1/2を子どもの人数で分割します。

②配偶者と直系尊属がいる(子どもがいない)場合

法定相続人は「配偶者と直系尊属」で、配偶者が2/3、直系尊属が1/3の財産を引き継ぎます。直系尊属である被相続人の親が2人とも健在の場合は、1/3を2人で分割します。

③配偶者と兄弟姉妹がいる(子どもも直系尊属もいない)場合

法定相続人は「配偶者と兄弟姉妹」で、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4の財産を引き継ぎます。兄弟姉妹が複数人いる場合は、1/4を兄弟姉妹の人数で分割します。

④配偶者のみの場合

被相続人の子ども・直系尊属・兄弟姉妹がいない場合、法定相続人は「配偶者のみ」で、被相続人の財産全てを引き継ぎます。

 

2-2.4つの分割方法

被相続人の財産を分割しようと思っても、家などのように分割することが難しいものが含まれていることも少なくありません。そういった場合の分割方法には、次の4種類が挙げられます。家を例にして簡単に解説します。

①現物分割

土地のみであれば、土地を分筆してそれぞれを相続することができます。しかし、土地を分割しても活用できるほどの大きさでないと、分筆して遺産分割するメリットはありません。

また、建物は分割できません。同じ敷地に2件以上の家が建っているなどの場合は可能ですが、そのようなケースはほとんどないでしょう。

②代償分割

家を分割せずに1人が相続し、その人が多く相続した分を、他の相続人にお金で支払う方法です。

3,000万円の家を含む5,000万円分の相続財産を、2人で2,500万円ずつに分割する場合で考えてみましょう。家を相続する側は3,000万円分を受け取っており、500万円多くなってしまいます。もう一方は、2,000万円しか受け取れず、500万円少なくなっています。その500万円分を、家を受け取った側が現金でもう1人に支払うことで、家を分割せずに、2,500万円ずつで分割できたことになります。

ただ、この方法は、家を引き継ぐ相続人に、差額を支払えるだけの資産がなければなりません。

③換価分割

換価分割は、家や土地を売却し、そのお金を相続人で分割する方法です。

誰も家そのものを引き継ぐ意思がない場合に活用できる方法で、現金化することで平等に分けられる方法でもあります。しかし、家が地方にある場合など、買い手が見つからない場合には、換価分割をすることができません。

④共有

家を複数の相続人の共有名義にする方法です。2人なら半分ずつ、3人なら1/3ずつ、平等に引き継ぐことができますが、この方法には大きなデメリットがあります。

複数人の共有名義になっている不動産は、共有している全員が同意しないと、増改築や売却などをすることができないためです。

このような4つの分割方法がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあり、分割後の家の維持管理や税金の負担などにも影響してくる問題です。分割方法は慎重に決めるようにしましょう。

 

2-3.配偶者居住権

民法改正で新しく定められた権利に「配偶者居住権」というものがあります。これは、被相続人が亡くなったことをきっかけに、配偶者が住む場所を失ってしまわないようにするための制度で、2020年4月以降に開始する相続で適用されます。これにより、被相続人が配偶者居住権を使った遺産分割を遺言書に記載したり、遺産分割協議で配偶者居住権を設定したりすることができます。

相続財産が5,000万円で内訳が「家3,000万円と預金2,000万円」、相続するのが配偶者と子ども1人(遺言書なしのため法定相続割合で1/2ずつに分割すると仮定)だったとしましょう。

この場合、配偶者が引き続き同じ家に住み続けるためには、家を相続することになります。しかし、配偶者が家を相続するためには、2,500万円を超える部分を子どもに支払う代償分割をするしかありません。配偶者固有の財産がない場合、配偶者の相続後の生活に問題が起きてしまうでしょう。

逆に、配偶者が家をあきらめてお金を受け取る場合は、住む場所を見つけられれば大丈夫かもしれません。しかし、高齢だと、家を借りるハードルが高くなってしまうという問題があります。

こういった課題を解決するために、「配偶者居住権」が設けられました。

配偶者居住権は、家の価値を「居住権」と「所有権」に分割し、それぞれ別の人物が相続できるようにしたものです。

3,000万円の家の配偶者居住権が1,000万円と算出された場合、配偶者は「家の居住権1,000万円と預金1,500万円」を受け取ることができ、住む場所とその後の生活費を確保することができるのです。

 

3.家を相続するときの相続税の計算方法

家を相続したことで、どれくらいの相続税がかかるのでしょうか。これについても、相続の手続きと同様に、「家そのものにかかる相続税」があるわけではなく、相続した財産全体に対して相続税が計算されます。そして、その相続税を、相続人で配分して負担することになります。

 

3-1.課税相続財産となるもの

課税相続財産は、銀行預金や家などの不動産だけではありません。相続によって受け取った被相続人の財産以外に、次のようなものが加算・減算されます。

①みなし相続財産

生命保険金や死亡退職金などがあてはまります。これらは、被相続人からではなく保険会社や会社から受け取るものですが、相続財産とみなされます。

ただし、生命保険金と死亡退職金には、非課税となる金額が設けられています。いずれも「500万円×法定相続人の数(法定相続人の数は、相続放棄をした人も含む)」までの金額が非課税となります。

②相続時精算課税制度の適用を受けて贈与された財産

相続時精算課税制度を適用して生前に贈与された財産は、相続財産に加算されます。その上で相続税を計算し、支払った贈与税との差額を精算します。

③債務・葬式費用

被相続人が死亡したときに存在していた債務は、相続財産から差し引くことができます。これには、被相続人の死亡後に納付する所得税なども対象です。ただ、相続人の責による延滞税や加算税は差し引くことはできません。

また、債務ではありませんが、葬式費用も相続財産から差し引くことが可能です。

 

3-2.基礎控除

相続税には基礎控除があり、基礎控除額を超える財産を相続する場合にのみ、相続税がかかります。基礎控除は法定相続人の人数によって変わるもので、下記の計算式で求められます。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

※法定相続人の数は、相続放棄をした人も含む

法定相続人が、配偶者と子ども2人だった場合は、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となります。

被相続人からの相続財産が基礎控除を超えている場合は、相続税額の計算をして申告・納税をしなければなりません。

 

3-3.相続税額は法定相続割合で分割した場合の金額になる

相続税額は、「法定相続割合で分割した」と仮定して計算されます。

配偶者と子ども2人おり、課税対象となる相続財産から基礎控除を差し引いた金額が5,000万円となった場合で計算してみましょう。

法定相続分は、配偶者が1/2の2,500万円で、子ども1人あたりは1/4(1/2の半分)の1,250万円となります。この金額を使ってそれぞれの相続税額を計算し、合計したものが、相続人が全員で負担すべき相続税額となります。

相続税額は、下記の速算表 で計算することができます。

法定相続分での相続額(A) 税率(B) 控除額(C)
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

※「A×B-C」で、各法定相続人の相続税額を計算する

配偶者:2,500万円×15%-50万円=325万円

子(1人あたり):1,250万円×15%-50万円=137.5万円

相続人全員で負担する相続税額:325万円+137.5万円×2人=600万円

 

3-4.実際に取得した財産の割合で、相続税を配分する

上記で求めた全員で負担する相続税額を、実際に取得した財産の割合に応じて配分して負担します。

仮に、配偶者が2/3を受け取り、子どもが残りを半分ずつに分けた1/6ずつを受け取った場合、それぞれの相続税負担は、配偶者は400万円で、子どもは1人あたり100万円と計算されます。

 

3-5.不動産の評価額の決まり方

ここまで、相続税の計算方法を説明しました。ただ、相続財産を計算するうえでの不動産の評価額は、実際に売買される金額などとは異なる基準で定められていますので注意してください。なお、土地と建物で少し違いがあります。

建物は、固定資産税を課税する基準になる「固定資産税評価額」と同額です。そのため、固定資産税の課税明細書を見ることで確認ができます。課税明細書は固定資産税の納付書とともに送付されています。

一方、土地については、固定資産税評価額ではなく相続税評価額が別に決められています。路線価が定められている路線に面している場合は、路線価が1㎡あたりの評価額(路線価方式)です。ここから、土地の形などで補正が加えられて、正式な相続税評価額が決められます。

路線価が定められていない場合は、固定資産税評価額に一定の倍率をかける倍率方式が採られています。

 

3-6.相続税の特例が使える場合

相続税にはさまざまな特例が設けられています。

特例の種類 概要
配偶者の税額の軽減 後述
未成年者の税額控除 相続人が未成年のときは、満18歳になるまでの年数1年につき10万円の税額が控除される
障害者の税額控除 相続人が85歳未満の障害者のときは、満85歳になるまでの年数1年につき10万円の税額が控除される
(特別障碍者の場合は年20万円)
相次相続控除 今回の相続開始前10年以内に、被相続人が相続などで財産を取得し相続税が課されていた場合に受けられる
小規模宅地等の特例 後述

これらの特例を使ったことで相続税がゼロになる場合でも、「特例を使って、納税額がゼロになった」という内容で申告しなければならない点には注意してください。

その中でも、使われることが多い「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の特例」については、下記で詳しく解説します。

 

3-7.配偶者の税額軽減

配偶者の相続した財産が、配偶者の法定相続分相当額または1億6,000万円のいずれか多い金額までは、相続税がかかりません。

この財産は「正味額」となっているため、基礎控除などを差し引いた後の金額ではなく、実際に取得した財産額をもとにして計算されます。

 

3-8.小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、被相続人から相続した宅地(土地のみで建物は対象ではない)について、一定の基準を満たしている場合に、相続税を計算するための評価額が最大80%減額されるものです。

下記の表のように、宅地の種類により減額対象の面積や減額割合が異なります。

種類 限度面積 減額割合
特定居住用宅地等 330㎡ 80%
特定事業用宅地等 400㎡ 80%
特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

特定居住用宅地等に該当する場合、「面積330㎡までの部分について、評価額が80%軽減」されます。1㎡あたり30万円で200㎡の宅地だった場合、土地の評価額は6,000万円(30万円/㎡×200㎡)ですが、この80%に相当する4,800万円が減額されることになります。

ただ、特に気をつけておきたいのが、特定居住用宅地等に該当するための要件です。

区分 取得者 要件
被相続人が住んでいた宅地等 配偶者 要件なし
同居していた親族 相続開始直前から申告期限まで、引き続き居住し所有していること
それ以外 ・被相続人に配偶者がいない
・相続開始直前に同居していた他の相続人がいない
・相続開始前3年以内に自己所有等の家に居住していない
など
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族が住んでいた宅地等 配偶者 要件なし
生計を一にしていた親族 相続開始直前から申告期限まで、引き続き居住し所有していること

このような適用条件があるため、「被相続人の子どもが家を相続するが、被相続人と同居していた他の子どもがいる場合」などでは、小規模宅地等の特例は適用できないことになります。

 

4.家を相続するときに必要な手続きとは

遺産分割の協議が完了した後は、家を相続した人が新しい所有者であるという登記をしましょう。日本の法律では、不動産登記は義務化されていません。しかし、不動産登記をしていることが第三者への対抗力になるため、後々のトラブルを未然に防ぐためにも、必ず登記をしておきましょう。

 

4-1.不動産登記をする場所

不動産登記は法務局で行います。ただ、全国どこでも受け付けているわけではなく、相続する家の所在地を管轄する法務局でなければなりません。

 

4-2.不動産登記にかかる費用

不動産登記をするには、費用がかかります。不動産登記をするときには「不動産取得税」と「登録免許税」がかかるのですが、法定相続人が相続で家を引き継いだ場合には、不動産取得税はかからず、登録免許税だけがかかります。ただし、死因贈与契約で引き継いだなどの場合は、不動産取得税もかかりますので注意が必要です。

登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%と定められており、5,000万円の評価額であれば20万円必要です。

この不動産登記を、司法書士などの専門家に依頼した場合は、その報酬として5~10万円程度かかります。さらに、後述する必要書類の取得代行なども依頼した場合は、その費用が追加されます。

 

4-3.必要な書類

不動産登記にあたって必要になる書類には、下記のようなものが挙げられます。

  • 被相続人が生まれてから死亡するまで全ての戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 固定資産評価証明書
  • 全部事項証明書
  • 遺産分割協議書
  • 不動産を引き継ぐ人の住民票

なお、必要な書類は、遺言書の有無などによって変わるため、法務局や専門家に確認するなどして、もれなく準備できるようにしておきましょう。

書類の種類が多く、相続人それぞれのものを集めなければならないこともあり、書類をそろえるまで時間がかかってしまうことが予想されます。いずれ必要になるものなので、相続が始まってから、早いうちに用意しておくことをおすすめします。

 

まとめ

家を相続する場合、不動産登記だけをすればよいのではなく、相続に関するすべての手続きを同時に行わなければなりません。そのため、相続全体の流れを意識しながら、スムーズに手続きができるよう、計画的に準備を進めることが大切です。

遺言書の確認から始まり、相続税の金額を確認して納税資金を準備するなど、相続税の申告期限である10か月までの間に多くのことをこなさなければなりません。

ミスなく適切に家を相続できるようにするためにも、司法書士や税理士等、相続に関する専門家の助言やサポートを受けながら作業を進めることをおすすめします。

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