相続税の延納と農地

農業を営んでいた被相続人または特定貸付けを行っていた被相続人から一定の相続人が一定の農地等を相続や遺贈によって取得し、農業を営む場合又は特定貸付けを行う場合には、一定の要件の下にその取得した農地等の価額のうち農業投資価格{投資価格は国税庁ホームページのホーム画面の「路線価図」の中で確認することができますが、農地等が恒久的に農業の用に供される土地として自由な取引がされるとした場合に通常成立すると認められる価格として国税局長が決定した価格(20万円~90万円程度/10a)}による部分に対応する相続税は、その取得した農地等について相続人が農業の継続又は特定貸付けを行っている場合に限り、その納税が猶予されます。(猶予される相続税額を「農地等納税猶予税額」といいます。)

この農地等納税猶予税額は、次のいずれかに該当することとなった時に免除されます。なお、相続時精算課税に係る贈与によって取得した農地等については、この特例の適用を受けることはできません。

 

免除される場合

(1)特例の適用を受けた農業相続人が死亡した場合

(2)特例の適用を受けた農業相続人が特例農地等(この特例の適用をうける農地等をいいます。)の全部を租税特別措置法第70条の4の規定に基づき農業の後継者に生前一括贈与した場合※特定貸付けを行っていない相続人に限る

(3) 特例の適用を受けた農業相続人が相続税の申告書の提出期限から農業を20年間継続した場合(市街化区域内の農地等に対応する農地等納税猶予税額部分に限る)
※特例農地等の内に都市営農農地等を有しない相続人に限る。

 

農地を農業目的で使用している限りにおいては到底実現しない高い評価額により相続税が課税されてしまうと農業を継続したくても相続税を払うために売却せざるを得ないという問題が生じるため、自ら農業経営を継続する相続人を税制面から支援するために相続税の納税猶予制度が設けられました。(昭和50年創設)

相続税の納税猶予制度は、相続人自らが農業の用に供する場合のみを対象としていましたが、効率的な利用を促進する観点から、市街化区域外の農地に限り、特定貸付け(※)を行った場合についても適用できることとなりました。(平成21年改正)
※特定貸付けとは、次の事業に貸付けることをいいます。

  • ①農地中間管理事業
  • ②農地利用集積円滑化事業
  • ③利用権設定等促進事業(農用地利用集積計画)

 

相続税納税猶予の概要

相続又は遺贈により農地等(農地、採草放牧地及び準農地※)を取得し、当該農地及び採草放牧地が引き続き農業の用に供される場合には、本来の相続税額のうち農業投資価格を超える部分に対応する相続税が、一定の要件のもとに納税が猶予され、相続人が死亡した場合等に納税猶予額が免除されます。

※準農地とは、10年以内に農地又は採草放牧地として農業に供することが適当と市町村長が証明したもの。

 

納税猶予額のイメージ

上記のように農地等の納税猶予は、本来の相続税額より大幅に納税額をおさえることができますが、抑えられた納税額は、生涯にわたって、農業を続けていくという前提で適用できる特例ですので相続人への負担がかなり大きくなってしまいますので、適用については相続に強い税理士に相談されることをおすすめします。

 

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