相続税と未分割の場合の債務控除

相続税は、相続により財産を受け取った人が払う税金です。取得財産の価額に相続時精算課税の価額を足し、これから負債(マイナスの財産=債務及び葬式費用)の額を控除(これを「債務控除」と言います。)して純資産価額を算出し、さらに基礎控除額を引いて課税価格となります。
「債務控除」は、相続税の申告書の第13表である「債務及び葬式費用の明細書」に具体的な金額を記入して申告します。
なお、控除できる金額と控除できない金額が内容ごとに決められている(ここでは字数の関係で省略させていただきます)ので、集計する際には十分な注意が必要です。

 

未分割で相続税申告した場合の債務控除

ところで、相続人間で遺産分割協議が不調となってしまい、相続税の申告期限を迎えやむなく未分割で申告することになるケースがあります。この場合には、債務控除(相続開始の日時点の被相続人の医療費の未払額、固定資産税など各種税金の未払額、借入金の残高、など)はどのように相続人へ配分するかという問題があります。


この問題の答えですが、未分割の場合は、債務や葬式費用は集計した額を法定相続割合で負担したものとして計算します。申告書の第13表で、「負担することが確定していない債務」の欄に法定相続分の割合に応じて記入します。


法定相続割合ですが、民法で規定されています。相続人が3人いるケースを考えます。
配偶者と子2名の合計3名の場合は配偶者が2分の1で子2人がそれぞれ4分の1ずつとなります。3名全員が子で同順位となっている場合は、子3人がそれぞれ3分の1ずつになります。

では、特別受益者が存在していたことが後から判明したため、分割協議が紛糾してしまい未分割で申告期限を迎えたというイレギュラーな場合はどのようになるかも考えてみましょう。

分割協議が紛糾してしまい未分割で申告期限を迎えたケース

例として相続人が3人すべて子(長男A、次男B、3男C)で、取得財産価額が9千万円、債務及び葬式費用の6千万円であったとします。
1人3千万円の財産と2千万円の債務の取得で決まっていたはずが、長男Aが10年前に被相続人から3千万円を生前贈与を受けて贈与税の申告していたことをずっと秘密にしていました。ところが何らかの記録から突然発覚してAとB,Cが争いになったとします。この未分割の申告では特別受益の持ち戻し計算を行いますが、すると課税遺産総額は1億2千万円とみなされますので、法定相続分ですと1人4千万円の財産取得となります。


未分割の申告書上の各人の取得財産価額は長男A1千万円(3千万円は10年前の特別受益であり相続開始前3年以内の贈与ではないので相続税の課税価格に含めません)、次男B及び3男Cはそれぞれ4千万円となります。一方債務は未分割ですので法定相続割合で各人は2千万円の債務を取得します。これにより、Aは取得財産価額1千万円から2千万円の債務を控除するとマイナス1千万円となります。


この場合、このマイナスとなった1千万円の控除不足はB,Cからそれぞれ5百万円づつ控除することによって、債務控除を適用することが可能となります。(根拠:相続税基本通達13-3)
なお、遺産分割及び特別受益の持ち戻し計算には期間制限がありません。持ち戻し免除するには、被相続人が、生前、贈与や遺贈を受けた受益者の特別受益分の持ち戻しをしなくてよいという意思表示をしていた場合に(遺言が確実です。)、持ち戻し計算が免除されます。ちなみに、共同相続人全員が合意している場合には持ち戻し計算は行わないで遺産分割協議が可能です。


このように相続は相続人及び関係者の平素の人間関係も影響してきますのでうまくいくか予断はつきません。

 

まとめ

以上のとおり、相続税は民法もからんで複雑な規定があります上に、所得税や法人税のように毎年申告を行うものではなく、相続自体が生涯通じても多くても数回という数十年に一度という大半の税理士にもなじみのないものですから、素人判断は禁物です。特例適用の可否については、必ず豊富な経験ある相続専門税理士に判断を仰いでください。また弁護士とも提携しているところがお勧めです。素人判断で高い納税額を結果的に選択してしまうことがないようにするには、平素から相続税専門の税理士に相談することがなによりも成功への道です。

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