相続税における調査と税務署
相続税申告の中で、申告後に税務調査に入る確率は現状約12%といわれています。今回は税務署が税務調査に入りやすい時期、相続財産の種類によってチェックされるポイント、税務調査が決定した場合、税務署はどのような流れで調査を行うかについて述べていきます。
税務調査が入りやすい時期
一般的には被相続人が亡くなり、三回忌が済んだ頃に税務調査が入る確率が高いといわれています。具体的には、申告書を提出して1年から1年半後に入る確率が高いようです。
相続税の申告を行うのは相続発生から10か月以内に行われますので、申告納付から税務調査までかなり長い期間が空くことになります。
基本的には申告された相続税申告書に基づいて、税務署が相続財産の状況を把握するために余裕をもったスケジュールにしていると考えられます。
税務署は銀行預金残高などを合法的にチェックすることができます。そのため怪しい現預金の動き方や、亡くなった人の生前の収入金額から考えて、相続財産があまりにも少ないというような場合には、積極的に税務調査を行ってくることが考えられます。
相続財産の種類によってチェックされるポイント
相続財産として相続税の課税対象となる財産は様々ありますが、それぞれの財産ごとに税務調査によってチェックされるポイントを知っておく必要があります。
(1)銀行預金
国税庁が公表している相続税の課税対象になる財産は、「現金・預金」が30%程度、「土地」40%程度、「株などの有価証券」が15%程度です。
銀行預金については、税務調査の時点での銀行預金残高から、何かを購入するために出金したお金や別の口座に移したお金の動きなど、相続開始日より10年さかのぼって預金の流れを税務署は見ることができます。税務署の調査官は何のためにお金を使ったのか等について質問してきますので、分かる範囲で回答しましょう。
(2)生命保険
生命保険金も注意が必要です。特に、被保険者が亡くなった夫で、契約書が妻や子供になっているケースは、実質的に保険料を負担していたのが亡くなった夫だった場合、受け取った保険金は相続財産であると判断されてしまうことがあるため注意しましょう。
(3)不動産
不動産は一般的に金額が大きく、相続財産としての評価を行う際の計算方法も複雑になりがちです。
各種の特例措置(小規模宅地の特例等)を利用できるケースも不動産の特徴ですが、これらの計算の行い方をめぐって税務調査で修正を指摘されることも少なくありません。
税務調査に備えて土地の権利証や不動産を購入した時の契約書等は大切に保管しておくようにし、いつでも取り出せるように準備をしておきましょう。
税務署はどのような流れで調査を行うか
(1)電話による日程調整
過去に申告した相続税の申告書の内容に基づいて、相続税を申告した代表の相続人に対して税務署職員から電話連絡が入ります。
税理士がかかわっていた場合は、その税理士に連絡が入ります。連絡がきてからいきなり自宅に押し掛けてくるというようなことはなく、調査予定日の2週間前くらいに連絡がくることが多いようです。
また、税務調査が行われるのは基本的には亡くなった人の生前に生活していた場所(相続した自宅など)であることが多いです。
(2)税務調査当日(現物確認調査)
調査の日程が決まったら、当日には税務署の調査官が相続財産の現物を確認しにきます。調査官は事前に綿密な下調べをしてきています。金融機関から情報をもらい、被相続人の亡くなる前5年間分くらいを徹底的に調査してきます。
また、小規模宅地等の特例などを使った場合は、登記簿上の宅地の面積を確認し、申告書に間違いがないか確認をします。
基本的に相続財産の内容についていろいろと質問されますので、回答できるようにしておきましょう。
今回は相続税申告で税務調査が入った場合の税務署の対応を中心に述べてきました。弊社では書面添付制度を活用しており、税務調査が入る前に意見聴取として税務署職員から税理士へ聞き取りが行われ、意見聴取を行った結果、税務調査が必要ないと認められた場合には税務調査が省略されるという流れになっております。一度意見聴取を挟むことで、税務調査に移行する確率が低減できるため、平成27年に行われた税務調査は405件の相続税申告のうち1%という結果になっております。
以上のことから税務調査を入りにくくするために、相続税申告はあらかじめ相続税を専門としている税理士に依頼して申告することをお勧めします。
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