令和5年度 税制改正大綱
「令和5年度 税制改正大綱」について、その主要な部分について解説します。
資産税
【1】相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への 加算期間の見直し
- ①相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、 当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする。
- ②上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用する。
【2】相続時精算課税制度の見直し
- ➀相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税
については、現行の基礎控除(累積2,500万円)とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとする。 - ②特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。
-
【3】期限の延長
- 土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税
→ 令和8年3月31日まで3年延長(本則2%→軽減措置1.5%) - 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
<適用要件の変更>
→ 令和8年3月31日まで3年延長
・受贈者が30歳に達した場合等において、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残高に贈与税が課されるときは、一般税率を適用することとする。
・信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合において、当該贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、受贈者が23歳未満である場合等であっても、その死亡の日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額を、当該受贈者が当該贈与者から相続等により取得したものとみなす。
<適用時期>
・上記の改正は、令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税、相続税について適用する。 - 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
→ 令和7年3月31日まで2年延長
<適用要件の変更>
受贈者が50歳に達した場合等において、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残高に贈与税が課されるときは、一般税率を適用することとする。
<適用時期>
・上記の改正は、令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用する。
所得税
【1】NISAの抜本的拡充と恒久化
『一般NISA』と『つみたてNISA』の選択式を廃止し、成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能なNISAを新設する。
改正後は生涯非課税限度額を1,800万円まで拡大し、非課税保有期間は無期限、投資可能期間に定めのない恒久制度となる。
【2】空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例
- (1)適用期限の延長
空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例について、適用期限を令和9年12月31日まで4年延長する。 - (2)適用要件の緩和
- 耐震基準に適合することとなった場合、その全部の取壊し若しくは除却がされ、又はその全部が滅失をした場合
- (改正前)当該譲渡の日までに上記に該当すれば適用可能
- (改正後)当該譲渡の時から当該譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に上記に該当すれば適用可能
- (3)特別控除額の変更
- 相続又は遺贈による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人の数が3人以上である場合における特別控除額を2,000万円へ変更する。
- (4)適用期限
上記(2)(3)の改正は、令和6年1月1日以降に行う被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡について適用する。 -
【3】優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の
長期譲渡所得の課税の特例
-
適用期限を3年延長する。
-
適用対象から特定の民間再開発事業の用に供するための土地等の譲渡を除外する。
-
開発許可を受けて住宅建設の用に供される一団の宅地の造成を行う者に対する土地等の譲渡に係る開発許可について、下記区域内において行われる開発行為に係るものに限定する。
①市街化区域
②市街化調整区域
③区域区分に関する都市計画が定められていない都市計画区域
(用途地域が定められている区域に限る)
法人税
【1】中小企業者等に対する法人税の軽減税率の特例
中小企業者等の年所得800万円以下の部分に適用される法人税の軽減税率の特例(15%)の適用期限を2年間延長する。
改正前:令和5年3月31日までに開始する事業年度
改正後:令和7年3月31日までに開始する事業年度
消費税
【1】適格請求書等保存方式に係る見直し
-
①適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置
適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる場合には、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、当該課税標準額に対する消費税額に8割を乗じた額とすることにより、納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割とすることができることとする。②確定申告書への付記
適格請求書発行事業者が上記①の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記するものとする。
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