土地を生前贈与して相続対策をする場合に知っておくべき、贈与税の仕組みと注意点

一般的な相続対策として、生前贈与が挙げられます。ただ、相続税と比較して贈与税は税率が高く、対策の仕方によっては多額の税金がかかってしまうこともあります。

土地を生前贈与することによるメリットはありますが、その場合は、贈与税の仕組みをしっかりと理解し、計画的な贈与をしなければなりません。

今回は、土地を子や孫に生前贈与する場合に知っておきたい、贈与税の課税方法や注意点についてお伝えします。

 

1.土地の贈与には2通りの方法がある

土地などの資産を保有しており、相続税がかかると想定される場合に、相続対策を検討している方もいるかと思います。相続対策方法のひとつとして、子や孫に土地を生前贈与するという方法があります。

1-1.土地を生前贈与するメリット

土地を生前贈与することのメリットは、大きく以下の2点が挙げられます。

  • 土地を引き継いでもらいたい相手に確実に贈与できる
  • 贈与後、その土地から得られる収入は受贈者のものとなる

贈与税の方が、税負担は大きくなるのが一般的です。しかし、その土地を子や孫に生前贈与することで、受贈者が「その土地を貸し出すことで賃料収入が得られる」といったメリットを受けられます。

1-2.贈与税の制度から見る2つの土地の贈与方法

贈与税は相続税よりも税率が高いため、贈与税の制度をしっかりと理解して、適切な手法を選択することが大切です。

土地を贈与するとなると贈与額は大きくなるため、よほどのことがない限り、贈与税の課税対象となるのは確実です。そこで、通常の贈与税の課税方法である「暦年贈与」以外に、「相続時精算課税制度」を活用することも検討しながら、最適な贈与方法を検討することが大切です。

では、暦年贈与と相続時精算課税制度について、それぞれの仕組みと注意点を見ていきましょう。

1-3.暦年贈与とは

「暦年贈与」は、通常の贈与税のルールにのっとった贈与方法です。

1月1日から12月31日までの1年間で、基礎控除額110万円を超える贈与を受けた場合、所定の税率で贈与税が課税されます。贈与税がかかる場合は、翌年2月1日から3月15日の間に、申告と納税をしなければなりません。

なお、複数の人から贈与を受けた場合、その合計額が基礎控除額を超えていれば、贈与税の課税対象となります。

贈与税の税率には、直系尊属からの贈与に適用される「特例税率」と、それ以外の贈与に適用される「一般税率」があります。

それぞれの税率は下記の通りです。

【特例税率】

基礎控除後の課税価格(A) 税率(B) 控除額(C)
200万円以下 10%
200万円超400万円以下 15% 10万円
400万円超600万円以下 20% 30万円
600万円超1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

 

【一般税率】

基礎控除後の課税価格(A) 税率(B) 控除額(C)
200万円以下 10%
200万円超300万円以下 15% 10万円
300万円超400万円以下 20% 25万円
400万円超600万円以下 30% 65万円
600万円超1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超1,500万円以下 45% 175万円
1,500万円超3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

※いずれも、贈与税額は「A×B-C」で求められる

1-4.相続時精算課税制度とは

「相続時精算課税制度」は贈与税の特例で、「60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫(※)への贈与」についてのみ選択できるものです。

※2022年3月までは「20歳以上の子・孫」でした

相続時精算課税制度を選択した場合、税金は、次のように課税されます。

【贈与税】

  • 贈与額合計2,500万円までは、贈与税非課税
  • 2,500万円を超える部分は、一律で20%

【相続税】

  • 贈与者の死亡時に、生前贈与分も合算して相続税額を計算
  • 相続税額から、すでに納付している贈与税額を精算(減額)する
  • 合算する贈与財産の評価額は「贈与時の価額」

相続時精算課税制度を利用するためには、制度の適用を受けようとする年の翌年の2月1日から3月15日までの間に申請しなければなりません。なお、一度選択すると、以降のすべての贈与が相続時精算課税制度の対象となり、暦年贈与に戻すことはできません。

また、相続時精算課税制度は、「贈与者ごと」に選択できるようになっています。例えば、「祖父からの贈与は相続時精算課税制度を選択し、父からの贈与は暦年贈与」という使い方も可能です。

1-5.贈与税以外の費用について

土地を贈与した場合、かかる税金は贈与税だけではありません。不動産取得税が課税されます。不動産取得税は、「法定相続人が相続で不動産を取得した場合」には課税されませんが、それと混同しないよう注意しましょう。

また、不動産の所有権移転登記にかかる登録免許税も必要ですし、司法書士等の専門家に手続きを依頼する場合は、その報酬もかかります。

【土地を贈与したときの贈与税以外の税金】

税金の種類 税率 備考
不動産取得税 課税標準額×3% ・標準税率は4%だが、2024年3月31日までは3%
・土地の課税標準額は「固定資産税評価額の1/2」
登録免許税 固定資産税評価額×2% ・登記手続きの際に必要

 

2.暦年課税制度を利用した場合

ではここからは、具体的な例を使って、贈与税の計算方法と注意点を解説します。

まずは、「暦年課税」を利用した場合です。

2-1.贈与税の計算方法

暦年贈与では、基礎控除110万円を超える受贈額の場合に、申告・納税が必要です。次のような例で、贈与税額を計算してみましょう。

【計算シミュレーション】

「評価額3,000万円の土地を、親(65歳)から子(35歳)へ一括贈与」した場合

※他の人からの贈与はないとする

  • 親から子への贈与のため、適用される税率は「特例税率」
  • 基礎控除後の課税価格:3,000万円-110万円=2,890万円
  • 贈与税額:2,890万円×45%-265万円=1,035.5万円

上記のようになり、贈与税額は1,035.5万円となります

2-2.注意点

暦年贈与で土地を贈与する場合、次の3つの点に注意しましょう。

①受贈者の納税資金も考えておくこと

贈与税を納税するのは受贈者です。現金を贈与した場合はそのお金で納税できますが、土地を贈与するのに、それを売却して納税することになってしまっては本末転倒です。

贈与するときに、どれくらいの贈与税がかかり、その納税資金があるかどうかを確認しておきましょう。場合によっては、土地と合わせて納税資金も贈与するなどの工夫が必要です。

②複数人から贈与を受けていないかを確認

贈与税は、受贈者が贈与されたものすべてを合算して計算されます。そのため、土地を贈与する年に他の人からの贈与を受けていると、想定以上に贈与税がかかってしまうこともあります。

他の人からの贈与を受けている場合は、土地の贈与を翌年に延期して、贈与税がかかりすぎないようにするといった工夫も必要でしょう。

③贈与から3年以内に贈与者が死亡した場合は、相続税の対象になる

相続税のルールに、「相続開始前3年以内の贈与は、相続財産として相続税の対象となる」というものがあります。これはつまり、贈与から3年以内に贈与者が死亡した場合は、贈与税の対象ではなく相続税の対象となるということです。

すでに贈与税を納税している場合は、その土地を含めて相続税を計算し、相続税額から納税した贈与税額を控除した金額を納税します。

子や孫への土地贈与で、これに該当することで税額が増えるケースは少ないですが、相続税の申告ミスにつながる可能性がありますので注意しましょう。

 

3.相続時精算課税制度を利用した場合

3-1.贈与税の計算方法

相続時精算課税制度を選択した場合、贈与者からの贈与額2,500万円までは非課税で、超過分は20%の贈与税がかかります。

贈与するものの評価額のうち、通算贈与額2,500万円を超える金額を計算し、贈与税額を計算しましょう。

【計算シミュレーション】

「父(65歳)・母(65歳)・長男(35歳)の3人家族で、相続時精算課税制度により、父から長男へ3,000万円の贈与を行った。その後、父が亡くなったときの遺産総額は1億円だった」場合

※他の贈与はなく、相続開始前3年以内の贈与にもあたらない

  • 贈与時の贈与税:(3,000万円-2,500万円)×20%=100万円
  • 父が亡くなった時の相続税額

 

相続財産:遺産総額1億円+相続時精算課税制度による贈与分3,000万円=1億3,000万円

 基礎控除額を差し引いた課税対象額:1億3,000万円-(3,000万円+600万円×2人)=8,800万円

 相続税額総額(課税対象額を法定相続割合で分割したと仮定した場合の金額)

  母:8,800万円×1/2=4,400万円 ⇒ 税額:4,400万円×20%-200万円=660万円

  長男:8,800万円×1/2=4,400万円 ⇒ 税額:4,400万円×20%-200万円=660万円

  相続税額総額:660万円×2=1,320万円

・実際の取得割合に応じて、相続税額を分配する

  長男の取得割合:8/13(1億3,000万円のうち8,000万円)

  母の相続税:1,320万円×5/13=507.7万円 ⇒ 配偶者軽減で0円

  長男の相続税:1,320万円×8/13=812.3万円

  長男の納税額:812.3万円-100万円=712.3万円(納付済みの贈与税を差し引く)

相続税の税額計算も同時に行わなければならないため複雑になりますが、上記のような税金がかかります。

3-2.注意点

相続時精算課税制度を選択する場合の注意点には、主に次の2点に注意しましょう。

①暦年課税に戻すことはできない

相続時精算課税制度は、一度選択すると、暦年課税に戻すことはできません。これは、毎年の基礎控除110万円の恩恵を受けられないという意味でもあります。

土地以外にも贈与する可能性がある場合は、その可能性も含めて、相続時精算課税制度を選択するメリットがあるかどうかを計算しましょう。

②2,500万円を超える贈与の場合は、納税資金にも注意する

相続時精算課税制度を選択した場合、2,500万円を超える金額の贈与について、20%の贈与税がかかります。

その税負担ができるよう、受贈者に納税資金があるかどうかを確認しておきましょう。

③贈与時に時価が高いと、トータルでの納税額が高くなることもある

相続時に納税額を精算する際、「贈与時の価額」で相続財産と合算されます。

土地を生前贈与する場合、土地価格が高くなっているときに贈与し、相続時に安くなってしまったようなケースでは、相続時精算課税制度を選択したことにより選択しなかった場合と比べて納税額が高くなってしまうこともあります。

 

4.土地の贈与税申告に必要な書類

土地を贈与して、贈与税を申告する場合、所定の申告書と合わせて必要書類を添付しなければなりません。

4-1.提出する申告書

贈与税の申告書は、暦年課税か相続時精算課税制度を利用しているかで変わります。

暦年課税:申告書第1表

相続時精算課税制度:申告書第1表と第2表、相続時精算課税選択届出書(適用を受ける年のみ)

4-2.申告書に添付する必要書類

申告書と合わせて必要になる書類には、次のようなものが挙げられます。

①マイナンバーの記載のある本人確認書類

税務署に申告書を提出する都度、マイナンバーの記載と本人確認書類の写しの提出が必要です。なお、窓口で申告書を提出する場合は、本人確認書類の提示でも構いません。

【本人確認書類の例】

  • マイナンバーカード
  • マイナンバーの記載のある住民票
  • 通知カード+運転免許証等の身元確認書類(氏名・住所等が住民票と一致している場合のみ)

②受贈者の戸籍謄本など

基礎控除を差し引いて300万円以上(受贈額410万円以上)の贈与を受け、親・祖父母からの贈与について「特例税率」の適用を受ける場合、受贈者が贈与者の子・孫であることを証明するために「受贈者の戸籍謄本」などを提出しなければなりません。

なお、過去に戸籍謄本を提出している場合は、申告書第1表に「戸籍謄本を提出した年と税務署名」を記入すれば、あらためて提出する必要はありません。

③土地及び土地の上に存する権利の評価明細書

贈与した土地の評価額を確認するための書類です。この評価明細書と、その評価の根拠となる書類を添付する必要があります。

 

5.まとめ

相続対策として生前贈与を行う場合は、暦年贈与と相続時精算課税制度の違いを理解し、生前贈与の計画と合わせてどちらの制度を利用するべきかを考えるようにしましょう。相続時精算課税制度は、一度選択すると暦年贈与に戻せないためです。

とはいえ、制度が複雑な部分もありますので、どちらを選択するかは、贈与税と相続税の両面から慎重に判断する必要があります。後悔のない相続対策をするためにも、少しでも不安なことがあれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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