タワマン節税が使えなくなるのは本当か?国税庁発表のルール改正案を徹底解説

2023年6月、国税庁が公表した資料がきっかけで、タワマン節税が使えなくなるのではないかと話題になっています。富裕層を中心に、相続税対策として人気のあるタワマン節税ですが、大きなルール改正によって、節税効果がかなり小さくなることが予想されます。

この改正は、これからタワーマンションを購入しようとしている人だけでなく、すでにタワーマンションを保有している人にも影響があります。

今回は、国税庁が公表したルール改正案について、徹底解説します。

1.2024年からタワマン節税が使えなくなる!?具体的にどう変わる?

タワーマンションの高層階の物件を購入し、市場価格と相続税評価額との差額を活用して相続税を軽減する「タワマン節税」は、富裕層の相続税対策としてよく知られている方法です。このタワマン節税が、2024年から使えなくなるのではないかと話題になっています。

1-1.国税庁からルール改正の見直し案が発表された

タワマン節税が使えなくなるかもしれないと話題になったきっかけは、2023年6月30日に国税庁が「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」という資料(※1)を公表したことです。

この中で、「令和6年1月1日以後の相続等又は贈与により取得した財産について適用する」として、新しい相続税評価の見直し案が書かれているため、2024年からのタワマン節税のルールが大きく変わる可能性があります。

※1 https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023006-018.pdf

1-2.タワマン購入の相続税対策とは何か

具体的にどのようなルール改正が発表されたのかを説明する前に、タワマン節税の仕組みを簡単に解説しましょう。

相続税は、被相続人が所有していた財産に対して課税されるものです。相続税の課税対象となるものには、現金・預貯金以外に、不動産、有価証券、動産などがあり、それらの財産は相続税評価額によって課税され、財産の種類によって評価額の計算方法が決められています。

家や土地といった不動産の場合は、細かい計算方法は割愛しますが、不動産の時価(市場価格)の7~8割程度が相続税評価額になるのが一般的です。

例えば、2億円で購入した不動産を相続する場合、(購入した時と価値が変わっていないとして)時価の7割で評価されたとすると、相続税評価額は1億4,000万円となります。現金で相続した場合と比べて、相続税評価額を6,000万円も引き下げることができ、その分だけ節税効果があると言えます。

さらに、タワーマンションの場合は、

  1. ①同じ広さの敷地に対して戸数が多く、土地の持分の評価額が低くなる
  2. ②人気があるため、高層階になるほど、市場価格が相続税評価額に対して高額になる

という特徴があります。

そのため、不動産の市場価格と相続税評価額の差が大きくなり、より節税効果が大きくなる「タワマン節税」が人気となっているのです。

2.タワマン節税は以前から見直しがあった

タワマン節税は「ルールの範囲内」で行える節税手法であり、それ自体が脱税行為と見られているわけではありません。

しかし、相続税を減らすためだけに不動産を売買している「行き過ぎた節税」が問題視されており、タワーマンションでの市場価格と相続税評価額との差額が大きくなっていることもあって、以前から見直しが検討されていました。

2-1.2017年の見直し

2017年には、タワーマンションの固定資産税等について見直しが行われました。

それまでは、タワーマンションは高層階になるほど市場価格が高くなるのに対し、「固定資産税評価額」が低層階でも高層階でもほぼ同じになっていました(同じ広さの場合)。そのため、購入した金額が高い高層階では、低層階と同水準の固定資産税がかかるのみで、相対的に固定資産税等の負担割合が小さい状態になっていたのです。

この問題を解消するために、2018年度に新たに課税される新築のタワーマンションから、階数に応じた税率が設定され、40階であれば1階に比べて約10%、固定資産税が増額されるようになりました。

しかし、この見直しは、2018年度よりも前に建設されたタワーマンションには適用されず、見直し対象の税金も固定資産税等のみで、相続税はまだ見直しされていませんでした。

2-2.タワマン節税にメスを入れるきっかけになったと言われる最高裁判決

2022年に、タワマン節税をめぐる最高裁判所の判決が出されました。これは、今回の見直し案が出されるきっかけになったケースとも言われています。

このケースでは、購入額が約13.9億円の複数の不動産について、相続税評価額が約3.3億円であるとして申告していました。

実は、この不動産は、自己資金に加えて、約10億円もの借入金と合わせて購入したものであり、相続税の申告の際、「資産と10億円の負債とを相殺して、相続税はゼロ」として申告していました。

裁判では、

  • 借入金の目的が相続税対策とされていた
  • 被相続人がかなり高齢のときに購入し、相続後短期間で売却していた

ということから、不動産の購入が「純粋な投資」ではなく「税金逃れ」が目的であることは明らかだと判断され、追徴課税と合わせて相続税が3億円を超える金額になるとされました。

上記のケースは特に悪質な税金逃れが問題視されましたが、他にも、「評価額の差が大きく、税負担の公平性を害している」という主旨の判決が出された事例があります。

こういったことから、「市場価格と相続税評価額との差額が大きくなりすぎているケース」での公平性を是正するための見直しが、本格的に検討されるようになったのです。

3.2024年からどう変わる?

上記の最高裁判決の影響などもあり、タワマン節税に本格的にメスが入れられることとなりました。その改正案として提示されたのが、2023年6月30日に出された「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」という資料(以下、「資料」)です。

その内容について、詳しく見てみましょう。

3-1.築年数や総階数、所在階、敷地持分狭小度で「評価乖離率」を計算

タワマン節税は、前述の通り、タワーマンションの高層階になるほど市場価格と相続税評価額との差が大きくなることを活用した手法です。その差が特に大きくなる物件について、相続税評価額の調整を行います。

資料では、相続税評価額が市場価格と大きく乖離する要因として、下記の4つを挙げています。

  1. ①築年数
  2. ②総階数(総階数÷33で指数化。なお、1.0を超える場合は1.0とする)
  3. ③所在階
  4. ④敷地持分狭小度(マンション一室の、敷地利用権の面積÷専有面積)

この4つを指標化して、次の計算式で「評価乖離率」を求めます。

なお、わかりやすくするため、資料に掲載されている式と少し表示を変えています。

評価乖離率=-①×0.033+②×0.239+③×0.018-④×1.195+3.220

評価乖離率の計算式からわかることは、次のようになります。

  1. ①築浅物件ほど、評価乖離率が高くなる
  2. ②総階数が高い物件ほど、評価乖離率が高くなる
  3. ③購入した部屋が高いフロアにあるほど、評価乖離率が高くなる
  4. ④総戸数が多い物件になると一室あたりの敷地利用権の面積が小さくなるので、評価乖離率が高くなる

3-2.評価乖離率が約1.67倍を超える場合は相続税評価額に評価乖離率と0.6をかける

評価乖離率を求めた後、それを下記の計算式で、相続税を課税するための評価額を求めます。

評価額=現行の相続税評価額×評価乖離率×0.6

※評価乖離率が約1.67以下の場合は、「現行の相続税評価額×1.0」とする

※評価乖離率が1.0未満の場合は、「現行の相続税評価額×評価乖離率」とする

評価乖離率によって、評価額は次のように変わります。

評価乖離率 現行の相続税評価額からの評価額増加割合
1.67 変化なし
2.00 1.2倍
2.50 1.5倍
3.00 1.8倍

評価乖離率が3.00の物件で、現行の相続税評価額が3,000万円の場合、評価額の増加割合が1.8倍になるので、相続税を課税するためのマンションの評価額は3,000万円×3.00×0.6=5,400万円となります。

評価額が2,400万円も増加するため、相続税の増加額も非常に大きなものとなります。

税率が20%だとすると480万円、30%だとすると720万円もの税負担アップになってしまうのです。

3-3.相続税増加の対象となる物件はかなり多くなることが予想される

このように、タワーマンションを保有している場合の相続税額が、これまでよりも大幅にアップする改正案が出されていますが、実態として、どれくらいの物件が増税対象になるのでしょうか。

国税庁が発表した資料の中には、不動産の市場価格と相続税評価額について調査したデータが公表されています。

そこでは、市場価格を相続税評価額で割った「乖離率(※2)」について、マンションと一戸建てと比較しながら、実態を示しています。

※2 乖離率=市場価格÷現行の相続税評価額。改正案で出てくる「評価乖離率」とは異なるもの

マンションの乖離率の推移

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
乖離率 1.67 1.94 2.00 2.30 2.40 2.34

2018年におけるマンションと一戸建ての乖離率分布

乖離率 1.25未満 1.25以上 1.5以上 1.5以上 2以上 2.25以上 2.5以上
マンション 9.5% 6.6% 7.6% 10.7% 11.3% 12.4% 42.0%
一戸建て 22.9% 16.4% 17.9% 17.9% 11.9% 8.0% 5.0%

※いずれも、国税庁の報道発表資料より作成

2018年では、マンションの市場価格は、平均で相続税評価額の2.34倍にもなっています。また、乖離率が2.5倍以上となるものが42%もあり、一戸建てと比較しても非常に高い水準です。

約65%のマンションが、乖離率2倍以上(評価額が市場価格の半分以下)となっていることから、タワーマンションだけに限らず、かなり多くのマンションで相続税額が増えると予想されます。

4.ルール改正の対策法はある?

ここまで、国税庁が出した改正案について解説してきました。では、この改正案に沿ったルール改正が行われた場合、タワマン節税はどうなるのでしょうか。

結論から言うと、タワマン節税の節税効果がなくなるわけではありませんが、効果がかなり小さくなってしまいます。

タワーマンションを購入することで節税効果が大きかったのは、相続税評価額と比較して市場価格がとても高額になっていた(乖離率が高かった)からです。

そして、2024年以降に開始する相続で適用される予定のため、すでにタワマン節税をしていた方も、想定よりも相続税負担が非常に大きくなってしまうことが予想されます。では、ルール改正に備えた対策はできるのでしょうか。

  • これからタワーマンションを購入しようと考えていた方
    節税効果が小さくなることを前提にして、あらためて、他の節税方法を含めて検討しなおすことをおすすめします。
  • すでにタワーマンションを保有している方
    想定していた節税効果が失われてしまうことになります。どれくらい相続税額が増えるかを確認して、その資金を準備しておかなければなりません。賃貸に出しているのであれば、賃料収入のシミュレーションをして、キャッシュフローを確認しておくことも必要です。

その上で、タワーマンションを保有し続けるか、他の節税方法も実行するかといったことを検討しましょう。

5.少しでも迷うことがあったら専門家に相談を

タワマン節税のルール改正は、タワーマンションを保有している人にとって、非常に大きなインパクトを与えるものです。場合によっては、相続税の増加額が1,000万円を超えるケースもあるかもしれません。

相続対策プランに大きな影響を与えることになるため、少しでも早いうちに、相続税額の再計算と、節税手法の再検討をしておくことをおすすめします。

とはいえ、評価乖離率の計算方法や相続税のシミュレーションは簡単ではありませんし、まちがった計算をしていて相続のときに想定外の負担が発生してしまっては大変です。

適切な相続計画を立てるためにも、税理士などの専門家にご相談ください。

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