高額療養費は相続後でも請求できる?相続財産になるケースや申請期限を徹底解説

高額療養費制度は、医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に、超過分が払い戻される仕組みですが、受け取る前に本人が亡くなってしまった場合、その支給金はどうなるのでしょうか?実は、相続人が代わって請求することが可能です。ただし、申請には期限があり、支給金が相続財産として扱われる場合もあるため、取り扱いには注意が必要です。本記事では、高額療養費の概要から、相続後でも請求できるケース、相続財産としての扱い、申請手続きや注意点までをわかりやすく解説します。

1.高額療養費は、受取人の相続発生後でも請求は可能です

高額療養費は、被保険者本人が亡くなってしまった場合でも、一定の条件を満たせば、相続人が代わりに申請し、受け取ることができます。ただし、すべてのケースで認められるわけではなく、申請時期や相続の状況によって対応が異なります。ここでは、まず制度の基本と、生前に申請する場合の流れを確認しましょう。

1-1. 高額療養費とは?

高額療養費とは、公的医療保険に加入している人が、1か月あたりの医療費の自己負担額が高額になった場合に、一定の限度額を超えた分が払い戻される制度です。国民健康保険や協会けんぽ、組合健保など、保険の種類を問わず共通して適用される仕組みです。

この制度は、医療費の自己負担による経済的負担を軽減することを目的としており、所得に応じた自己負担限度額が設定されています。たとえば、一般的な所得の人の場合、ひと月の医療費の自己負担額が約8万円を超えた分については、後日「高額療養費」として支給されます。

支給を受けるには、原則として被保険者本人が健康保険組合や市区町村に対して申請を行う必要があります。ただし、70歳以上で一定の条件を満たす場合など、申請が不要なケースもあります(自動的に払い戻される)。

また、支給は後払いとなっており、申請後から実際の振込までには通常2〜3か月程度かかります。そのため、入院や手術などで一時的に高額な支出が発生した際は、一時的に立て替える必要があります。なお、後述する「限度額適用認定証」を事前に取得しておけば、窓口での支払いを軽減することも可能です。

1-2. 生前に申請する場合の手続きと支給までの流れ

支給を受けるには、原則として被保険者本人が健康保険組合や市区町村に対して申請を行う必要があります。申請先は、加入している医療保険の保険者(市区町村・健康保険組合など)です。申請は診療を受けた月の翌月以降に可能で、医療機関から発行される領収書をもとに申請書類を作成します。

一般的な流れは以下の通りです。

  1. 医療機関での受診・支払い
  2. 領収書を保管
  3. 加入保険の窓口で申請書を取得・記入
  4. 領収書や被保険者証のコピーを添えて提出
  5. 約2〜3か月後に指定口座へ支給金が振り込まれる

申請の期限は、診療を受けた月の翌月の初日から2年以内です。この期間を過ぎると、時効により支給を受ける権利が消滅しますので注意が必要です。

なお、事前に「限度額適用認定証」を取得して医療機関に提示すれば、窓口での支払い自体を抑えることができ、後からの払い戻し手続きが不要になるケースもあります。しかし、認定証の発行も申請が必要なため、計画的な医療支出が見込まれる場合は、早めの対応が望まれます。

2.高額療養費の支給金は相続財産になる?

被保険者が高額療養費を受け取る前に亡くなった場合、その支給金は「相続財産」として扱われることがあります。既に申請していたかどうかによって扱いが異なり、相続人が受け取ることが可能な場合と、手続きのやり直しが必要な場合があるため注意が必要です。ここでは、申請状況に応じた取扱いの違いを解説します。

2-1. 申請済みで未受給の場合

高額療養費がすでに申請されていたにもかかわらず、被保険者が支給を受ける前に亡くなった場合、その支給金は被相続人の相続財産として扱われます。つまり、まだ振り込まれていない状態でも「受け取る権利」が発生しており、法定相続人がそれを受け継ぐことになります。

このケースでは、申請手続き自体は既に完了しているため、相続人は追加で申請する必要はありません。ただし、保険者(市区町村や健康保険組合など)に対して、相続人が「被相続人の権利を継承していること」を証明する必要があります。

具体的には以下のような書類が求められます:

  • 戸籍謄本(被相続人と相続人の関係が分かるもの)
  • 相続人の本人確認書類(運転免許証など)
  • 相続関係説明図(必要に応じて)
  • 振込先の通帳のコピー

なお、受け取った高額療養費は相続財産として扱われるため、相続税の対象になる可能性もあります。遺産分割協議が未了の状態であっても、他の財産と同様に遺産分割の対象となり、誰が受け取るかを決める必要があります。すでに申請済みでも、その扱いには十分な注意が必要です。

2-2. 未申請の場合

高額療養費が未申請のまま被保険者が亡くなった場合でも、相続人が代わりに申請を行うことで、支給を受けることが可能です。ただし、この場合は「支給される前の段階」であるため、申請そのものを相続人が行う必要があります。そして、この時点ではまだ権利が確定していないため、未支給の高額療養費が直ちに相続財産に含まれるわけではありません。

相続人が申請をして初めて、支給される権利が発生し、その金額が相続財産として扱われることになります。つまり、実際に支給が確定した段階で、その金額が遺産として加わります。

申請できる相続人には制限があり、法定相続人であることを証明する書類の提出が求められます。以下の書類が一般的に必要となります:

  • 被相続人の死亡が確認できる戸籍除籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続関係説明図
  • 申請者の本人確認書類
  • 医療機関の領収書や診療明細書など

また、申請期限は診療を受けた月の翌月初日から2年以内と定められており、期限を過ぎると時効により請求権が失われます。未申請で放置してしまうと、せっかく受け取れるはずの高額療養費が無効になる可能性もあるため、相続発生後は速やかに対応することが重要です。

3.相続人が代わりに申請する方法を確認しましょう

被保険者が亡くなった後でも、高額療養費は一定の条件を満たせば相続人が代わりに申請し、受け取ることが可能です。しかし、そのためには適切な書類の準備や手続きが必要で、誰でも申請できるわけではありません。ここでは、相続人による申請の条件と具体的な方法について詳しく見ていきます。

3-1. 申請や受け取るための条件

相続人が被相続人の高額療養費を申請・受け取るためには、いくつかの条件を満たしている必要があります。まず前提として、相続人であることが証明できなければ申請はできません。相続人とは、民法で定められた法定相続人(配偶者・子・父母・兄弟姉妹など)で、被相続人との関係性を戸籍上で証明する必要があります。

また、次のような条件も満たす必要があります:

  • 被保険者が医療を受けた月の翌月初日から2年以内であること(時効があるため)
  • 高額療養費の支給対象である診療であること(保険適用外や軽微な診療は対象外)
  • 既に他の相続人が申請・受領していないこと
  • 必要な書類を正確に提出できること

さらに、相続人が複数いる場合は、だれが代表して申請・受領するのかを協議で決め、トラブルを防ぐために「相続人全員の同意書」や「委任状」を用意することが望ましいとされています。

高額療養費の受領は、財産の一部を取得する行為とみなされることがあるため、相続放棄を考えている人が申請や受け取りを行うと、法的に放棄が認められなくなる可能性があります。後述の注意点でも詳しく説明しますが、申請前には相続の方針を明確にしておくことが重要です。

3-2. 申請に必要な書類と具体的な手続き方法

被保険者が亡くなった後に、相続人が高額療養費を申請する場合は、通常の申請よりも必要な書類が多くなります。これは、相続人が「受給する正当な権利を持つ者である」ことを証明しなければならないためです。以下が主な必要書類です。

  • 被相続人の死亡が確認できる戸籍除籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続関係説明図
  • 申請者の本人確認書類
  • 医療機関の領収書や診療明細書など

手続きの流れは以下の通りです:

  1. 必要書類を揃える
  2. 保険者(市区町村の保険課や健康保険組合など)に申請書を提出
  3. 書類の確認・審査が行われる
  4. 問題がなければ、約2〜3か月後に指定口座へ支給金が振り込まれる

なお、書類に不備があった場合は審査に時間がかかるため、事前に保険者へ確認しながら準備するのがおすすめです。

4.注意点

相続人が高額療養費を申請・受け取る際には、いくつかの注意点があります。特に見落としがちなのが、相続放棄との関係や申請期限、医療費控除との混同です。これらを正しく理解しておかないと、後で思わぬ不利益を被る可能性があります。ここでは、高額療養費に関する代表的な注意点を3つ取り上げ、具体的に解説していきます。

4-1. 受け取ると相続放棄はできません

高額療養費を相続人が受け取ることは、法的には「相続財産の取得」とみなされる行為です。そのため、たとえ申請が単なる事務手続きであっても、受給してしまうと相続放棄が認められなくなる可能性があります。

相続放棄とは、家庭裁判所に申述することで、被相続人の財産・負債の一切を引き継がないという意思表示をする手続きです。しかし、放棄前に被相続人の財産を処分・使用・受領する行為があった場合、その放棄の意思が否定され、「単純承認」と判断されるリスクがあります。

高額療養費は、被相続人が亡くなる前に発生していた医療費に基づく返金であり、明確に相続財産に該当するものです。相続人がこれを申請・受け取った場合は、他の財産(不動産や預貯金など)と同様に「財産を取得した」と判断されかねません。

したがって、相続放棄を検討している相続人は、高額療養費の申請・受給を行う前に、家庭裁判所への相続放棄の手続きが完了しているかどうかを必ず確認する必要があります。相続放棄を希望する場合は、専門家に相談しながら行動することを強くおすすめします。誤って一部でも財産を取得してしまうと、取り返しがつかないこともあるため注意が必要です。

4-2. 2年の期限と起算日を確認しましょう

高額療養費の申請には、2年という明確な期限が設けられています。この申請期限を過ぎてしまうと、原則として高額療養費は時効となり、支給を受ける権利は消滅します。受け取れるはずの金額を失ってしまわないよう、起算日と期限をしっかり把握することが大切です。

2年の起算日は、「医療を受けた月の翌月1日」から数え始めます。たとえば、5月に入院・治療を受けた場合は、6月1日から2年間が申請可能な期間となります。つまり、この例では翌々年の5月末日までに申請を完了させる必要があります。

なお、被保険者がすでに亡くなっている場合でも、上記の起算日は変わりません。死亡日が起算日にならないため、注意が必要です。相続手続きや遺産分割協議に時間がかかってしまうと、申請期限が過ぎてしまう恐れがあるため、相続人は早めに確認・対応することが求められます。

また、高額療養費の申請には領収書や診療明細書の提出が必要なため、これらの資料も期限内はしっかり保管しておくことが大切です。申請の準備が遅れていると、せっかく支給対象であっても受け取れなくなることがありますので、早めの行動を心がけましょう。

4-3. 医療費控除と異なります

高額療養費と混同されやすい制度に「医療費控除」がありますが、両者は制度の目的や手続き方法、税務上の扱いがまったく異なります。特に相続手続きの中では、混乱しやすいため、正しく理解しておくことが重要です。

高額療養費は、医療機関に支払った自己負担額のうち、限度額を超えた分を公的医療保険から払い戻してもらう制度です。これは現金として戻ってくる給付であり、申請先は市区町村や健康保険組合などの「保険者」です。

一方、医療費控除は、年間の医療費が一定額を超えた場合に、確定申告で所得税の一部が軽減される制度です。こちらは還付金が発生する場合でも、税金の計算上の調整に過ぎず、対象となるのは主に納税者本人やその家族の医療費です。申告先は税務署であり、高額療養費とは制度の管轄も異なります。

5.まとめ

高額療養費は、被保険者が亡くなった後であっても、相続人が一定の条件を満たせば請求し、受け取ることが可能です。ただし、申請のタイミングや相続の状況によって、扱いが大きく異なるため注意が必要です。特に、すでに申請済みか未申請かによって、相続財産として扱われるかどうかが変わります。

また、相続人が申請を行う際には、必要書類を正しく揃えることに加え、相続放棄との関係にも十分注意する必要があります。高額療養費を受け取ると、相続放棄が認められなくなる恐れがあるため、手続き前に方針を明確にしておくことが大切です。

さらに、高額療養費には2年という請求期限があり、起算日は医療を受けた月の翌月初日からとなります。相続手続きや協議が長引くと、時効により請求権を失うリスクもあるため、早めの対応が重要です。

医療費控除との混同にも注意が必要です。両者は制度の仕組みや申請先が異なり、控除計算時には高額療養費を差し引く必要があるなど、正確な理解が求められます。

高額療養費の請求は、財産を正当に相続するための大切な手続きのひとつです。制度を正しく理解し、期限内に確実に対応することで、相続手続き全体を円滑に進めることができます。不明点がある場合は、ランドマーク税理士法人にご相談ください。

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