相続が発生した際に相続人同士で話し合いをする場として「遺産分割協議」があります。
亡くなった方(被相続人)が遺言書を残している場合は、遺言書通りの遺産相続を行う必要がありますが、遺言書がない場合は、遺産分割協議を行う必要が出てきます。
今回は、遺産分割協議について徹底解説します。
遺産分割協議を行う流れや開催する前の準備、注意点なども徹底解説していきます。
<この記事を読んでわかること>
- 遺産分割協議とは
- 遺産分割協議の必要性
- 遺産分割協議をする前に確認すべきこと
- 遺産分割協議の注意点
本記事を読めば遺産分割協議について理解することができます。
相続対策を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
1.遺産分割協議の方法に決まりはありません
遺産分割協議を行うための方法に決まりはありません。
ここでは、遺産分割協議の役割について詳しく解説します。
1‐1 そもそも遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、遺言書がない場合や遺言書に書いてある内容だけでは決まらない場合に相続人全員で話し合い、遺産分割を決定する手続きです。
この遺産分割協議では、民法で定められた被相続人の財産を相続できる人全員が参加することが条件になります。
亡くなった人の財産は、相続人全員の共有となります。
その財産をどのように分割するのかを話し合うのが遺産分割協議です。
1‐2 遺産分割協議に期限はある?
遺産分割協議は法律上の期限はありません。
そのため、いつでも遺産分割協議を行うことができます。
しかし、時間が経ってしまうと遺産が誰のものかがわからなくなってしまい、所有者が不明の遺産などが出てくる可能性もあります。
そのため、遺産分割協議は早めに行うことをお勧めします。
1‐3 遺産分割協議はなぜ必要なの?
遺産分割協議は遺産相続をスムーズに行うために必要になります。
なぜ必要かというと、相続人同士のトラブルを防ぐためです。
遺産相続は、お金が絡むことが多いため相続人同士でのトラブルにつながることも多いです。
そこで、遺産分割協議を行うことで相続人同士のトラブルを回避できます。
また、お互いが納得できた上で相続をするため、手続きもスムーズに行うことができるのです。
他にも次のようなメリットが生まれます。
- 一部の相続人が遺産を使い込むのを防ぐため
- 相続税申告を期限内に行い、特例を受けるため
詳しく解説していきます。
1-3-1 一部の相続人が遺産を使い込むのを防ぐため
遺産分割協議を行うと相続人全員の参加が必要となるため、被相続人からの相続財産があるということに気づくことができます。
その上で、全員での話し合いが必要になるため、一部の相続人だけが相続が発生したことを知って遺産を使い込むことを防ぐことができるのです。
1-3-2 相続税申告を期限内に行い、特例を受けるため
遺産分割協議を行うことで、遺産をスムーズに分けることができ、相続税申告の期限内に手続きを済ませられます。
遺産分割協議に期限はありませんが、相続税の申告などには期限があります。
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内とされます。
この期限内に申告できなかった場合は、延滞金などのペナルティを払うことにもなるため、期限内に申告した方が良いです。
また、申告期限内に遺産分割が間に合わなかった場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、後から特例措置を受けることもできます。
2.遺産分割協議で必要なことを確認しましょう
遺産分割協議の重要性がわかったところで、次は、遺産分割協議で必要なことを確認していきましょう。
ここでは、遺産分割協議で必要なことを4つご紹介します。
- 相続人全員が参加する
- 相続人が未成年や認知症の場合は特別代理人を立てる
- 遺産分割協議書を作成する
- 分割方法が決まったら相続財産の名義変更を行う
順番に解説していきます。
2-1 相続人全員が参加する
遺産分割協議を行うには、相続人全員が参加する必要があります。
遺産分割では、相続人全員の合意が必要となり、1人でも欠席してしまったり、参加を拒否したりしてしまうと無効になってしまうからです。
遺産分割協議で無効になってしまうと、遺産分割がスムーズに進まなかったり、相続の手続きが遅くなってしまったりする可能性も出てきます。
遺産分割協議が行われることを知ったら、必ず参加するようにしてください。
2-2 相続人が未成年や認知症の場合は特別代理人を立てる
遺産分割協議に参加するのが未成年だったり、認知症で判断がつかなかったりする人には特別代理人を立てます。
特別代理人には、相続の当事者に該当しない人に限られます。
通常、未成年者の代理人には親権者、認知症などで判断能力がない人は成年後見人などを立てることになりますが、その親権者、成年後見人が相続人に該当する場合は、裁判所に申し立てを行い、特別代理人を立てることになります。
2-3 遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議では、遺産分割協議書を作成する必要があります。
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意した内容を書き記した書類です。
特に正式な書式があるわけではないのですが、誰にどのような遺産を分割したかを書き記し、相続人全員の署名と実印を押印しなければなりません。
主に、遺産分割協議書で必要なことは次の通りです。
- 被相続人の名前と死亡日が記載されていること
- 相続人の全員が分割内容に合意していること
- 相続財産の詳しい情報が記載されていること
- 相続人全員の署名と実印の押印があること
- 遺産分割協議が成立した日付、または最後に署名した相続人が署名した日付が記載されていること
出来上がった書類は相続人全員が1通ずつ所持することが大切です。
遺産分割協議書は、後の相続の手続きや遺産の名義変更などに必要になるからです。
2‐4 分割方法が決まったら相続財産の名義変更を行う
遺産分割協議で分割が決まったら、それで終わりではありません。
相続財産の名義が被相続人になったままであるため、名義変更を行う必要があります。
相続財産の名義変更では、先ほどご紹介した遺産分割協議書を提出し、手続きを行います。
相続財産の名義変更は、遺産分割が決まったら早めに取り組むことをお勧めします。
相続登記を怠っていると、場合によっては、売却自体が上手くいかないこともあります。
遺産分割協議が終わったら、速やかに相続財産の名義変更を行うようにしましょう。
3.遺産分割協議の前に確認しましょう
続いて、遺産分割協議を行う前に確認しておくべきことをご紹介します。
確認しておくことは次の4つになります。
- 遺言書はあるか
- 相続人は誰なのか
- 目安として法定相続分を確認しておく
- 相続財産を確定する
詳しく解説します。
3-1 遺言書はあるか
遺産分割協議を行う前に遺言書があるかどうかを確認しておきましょう。
遺言書と遺産分割協議はどちらとも遺産を分けるための手続きの一つですが、遺言書がある場合は、原則、遺言書に書かれた内容に従うことが優先とされています。
そのため、遺言書があるかどうかを確認しておく必要があります。
遺言書の保管は、家に保管されている場合や公証役場に保管している場合などがあります。
3-2 相続人は誰なのか
被相続人が亡くなった後は、相続人が誰なのかを把握しておくことも大切です。
相続人がだれになるのかを把握しておくことは、遺産分割協議を行う際に相続人全員の参加が必要になるためです。
1人でも抜けてしまっていたり、連絡ができずに不参加になったりしてしまうとその時点で無効となり、遺産分割が長引いてしまいます。
そのため、遺産分割協議を行うことが決定した時点で誰が相続人に該当するのかを把握しておきましょう。
3-3 目安として法定相続分を確認する
法定相続分とは、民法で定められた相続割合のことです。
この法定相続分は、相続人と被相続人との続柄によって決まっており、割合も変わってきます。
法定相続分を把握しておくことは、遺産分割協議において重要になります。
なぜなら、法定相続分を把握しておくことは遺産分割の目安にもなり、遺産分割協議の話し合いをスムーズに進めることができるからです。
3-4 相続財産を確定する
遺産分割協議を始める前に相続財産がどれくらいあるのかを確定しておくのも大切です。
相続財産を確定させるためにやるべきことは次の2つになります。
- 相続財産を調査する
- 財産目録を作成する
それぞれについて詳しくご紹介します。
3-4-1 相続財産を調査する
まず、相続財産を調査します。
相続財産を調査しておくことで、遺産分割協議を円滑に進めることができます。
相続財産の調査は、被相続人のプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含めてどれだけの財産を持っているのかを調べる必要があります。
相続財産は、プラスになるとは限らず、マイナスの財産が残っていることも考えられます。
債務超過の場合は、相続放棄を考えることもできるため、早めに調査をしておくようにしましょう。
3-4-2 財産目録を作成する
相続財産の調査が終わった次は、財産目録を作成します。
財産目録とは、相続財産の内容を一覧にしたものです。
財産目録には、決まった書式はありません。
現金預金や株・不動産などの財産をはじめ、借金などの負の財産も記載します。
財産目録を作成しておくと、相続人それぞれが全ての財産を把握できるようになります。
この結果、遺産分割協議を円滑に進めることができるのです。
4.遺産分割協議をする際はこちらに注意しましょう
ここでは、遺産分割協議をする際に注意すべき点についてご紹介します。
気をつけるべき点は次の3点になります。
- 遺産分割協議がまとまらない場合の対応方法
- 遺産分割協議のやり直しはなるべくしない方が良い
- 借金の返済は遺産分割協議どおりとは限らない
詳しく解説します。
4-1 遺産分割協議がまとまらない場合の対処方法
遺産分割協議を行えば、すぐに話し合いがまとまるというわけではありません。
時には話し合いが難航し、なかなか決まらないことも出てくるかもしれません。
遺産分割協議は、相続人全員の合意が認められないと遺産分割が決定されないのです。
遺産分割協議でまとまらなかった場合は次のような対処を行います。
- 遺産分割調停
- 遺産分割審判
4-1‐1 遺産分割調停
遺産分割調停とは、家庭裁判所が間に入って話し合いを進める手続きです。
遺産分割調停では、相続人同士が話し合うわけではなく、第三者にあたる調停委員を介して話し合います。
調停での決定事項は、家庭裁判所が作成する調停調書にまとめられます。
この調停調書にまとめられた内容によって遺産分割が行われるのです。
遺産分割調停で決まらない場合は、調停不成立となり「遺産分割審判」に進むことになります。
4-1‐2 遺産分割審判
遺産分割調停で不成立になった場合は、自動的に遺産分割審判に移ります。
遺産分割審判は、遺産分割協議や調停とは違い、相続人の合意ではなく、裁判官の判断によって遺産分割が決まります。
審判では、相続人の主張や提出された資料をもとに裁判官が当事者の陳述を聞くなどして調査を行います。
そして、裁判官の調査の結果、相続分に応じた分割方法で審判が下されます。
4-2 遺産分割協議のやり直しはなるべくしない方が良い
遺産分割協議のやり直しはできますが、できればしない方が良いでしょう。
理由は、相続人同士でのトラブルにつながりやすいからです。
遺産分割協議のやり直しは、再度相続人全員の合意が必要になります。
やり直す理由がない限り相続人全員の合意を得ることは難しいでしょう。
また、遺産分割協議のやり直しをすることで、余計に時間もかかってしまうため、相続税の申告などにも間に合わなくなってしまう可能性も出てきてしまいます。
これらの理由から遺産分割協議は一度で終わらせるようにしましょう。
4-3 借金の返済は遺産分割協議通りとは限らない
被相続人に借金などの債務が残っている場合、原則として法定相続分にしたがって相続人が引き継ぐ形となります。
しかし、借金の返済は遺産分割協議通りとは限りません。
借金に関する遺産分割協議は、あくまで相続人同士で決めた内容であり、債権者は関与していないので協議通りにはいかないのです。
仮に借金を誰か1人が負担することになったとしても、債権者側は法定相続分までは他の相続人に返済を請求することができます。
もし、1人の相続人が借金の返済を負担する場合は、債権者の承諾が必要になります。
5.まとめ
今回は、遺産分割協議についてご紹介しました。
被相続人からの遺言書がない場合は、遺産分割協議が必要です。
遺産分割協議を行うためには、相続人全員の参加が必須となります。
遺産分割協議を行うには、開催前に被相続人にどれだけの遺産があるのか、相続人に該当する人は誰なのかをあらかじめ把握しておくことが大切です。
もし、遺産分割協議だけで決まらない場合は、遺産分割調停や遺産分割審判に進むことになります。
相続が発生したら、なるべく早く遺産分割協議を行うことをお勧めします。
遺産分割協議のやり方がわからない場合や、協議を進めることに不安を感じる方は、お気軽にランドマーク税理士法人までご相談ください。