相続税の物納は難しい?条件とできないケース、手続きや注意点を解説

相続税の納付は基本的に現金で行いますが、相続財産の中で現金が不足していて納付が困難な場合には「物納」という方法も認められています。しかし、物納は誰でも自由に選べるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。申請手続きや注意点も多く、条件を満たさない場合は物納が認められないことも少なくありません。 

本記事では、相続税の物納が難しい理由や、土地を含む財産を物納できる条件、物納が認められないケース、さらに手続きの流れや注意点まで詳しく解説します。物納の基本から申請方法まで理解し、納付方法を判断する際の参考にしてください。 

1.「延納」による相続税の金銭納付が困難な場合は「物納」も可能です 

相続税の納付は現金による一括納付が原則ですが、相続財産が不動産や非上場株式など現金化しにくい資産に偏っていると、資金を確保できないことがあります。そのようなときにまず利用が検討されるのが「延納」です。 

しかし、延納を用いても現金納付が難しいと認められる場合には、納税者の申請により、支払い困難な金額を限度として相続財産そのものを納める「物納」が認められることがあります。 

物納はあくまで最終的な救済手段であり、対象となるケースも限定的です。そのため、物納は特例制度のひとつとして位置づけられ、現金納付や延納での対応が不可能な場合にのみ検討されることになります。 

1-1 相続税の期限内納付が困難な場合はまず「延納」を検討する 

相続税を納める際、期限内に現金を一括で準備できない場合でも、いきなり物納を選択することはできません。まずは延納制度の利用を検討するのが原則です。 

延納は、一定の条件を満たすことで相続税を分割して長期にわたって納めることができる仕組みを指します。利子税の負担は生じるものの、相続財産を急いで処分せずに納付できる点がメリットです。 

延納は相続税に認められた特例制度であり、誰でも自由に選択できるわけではありません。利用するにはいくつかの条件があり、代表的な要件としては以下のようなものがあります。 

  • 納付すべき相続税額が10万円を超えていること 
  • 納期限までに現金で一括納付するのが困難であること 
  • 延納税額や利子税に相当する担保を提供できること(ただし税額100万円以下かつ期間3年以内の場合は不要) 

さらに、延納を希望する場合は、相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)までに申請書類を揃えて税務署に提出し、許可を得なければなりません。これらの条件を満たせない場合には延納は認められず、次の選択肢として物納の検討に移ることになります。 

1-2 物納には他にも要件がある 

延納を利用できない場合に限り、相続税を物で納める物納が検討できます。ただし、物納は非常に厳格な制度であり、延納では納税が困難であることに加えて、複数の要件を満たす必要があります。 

物納の対象となる財産は限定されており、国内にある不動産や株式などが中心です。また、相続時精算課税制度で贈与を受けた財産は原則として物納に使えません。さらに、財産の種類ごとに優先順位が定められており、優先順位に従って納める必要があります。 

加えて、申請手続きには期限があり、書類の不備や遅れがあれば物納が認められない可能性も高まります。物納を行うための具体的な要件について順にみていきましょう。 

1-2-1物納に適した財産のうち、国内にある財産を納付すること 

物納に充てられるのは、相続により取得した財産のうち、日本国内に所在するものに限られます。海外に不動産や証券を持っていたとしても、相続税の物納には利用できません。 

対象となるのは主に土地や建物、国債、上場株式などですが、すべての財産が自動的に認められるわけではなく、税務署の審査を通過する必要があります。特に不動産の場合は、権利関係が複雑であったり、境界が確定していなかったりすると、物納が難しくなるケースもあります。 

1-2-2 相続時精算課税制度によって贈与された財産でないものを納付すること

物納に充てられるのは、相続によって取得した財産に限られます。相続時精算課税制度を利用して生前贈与された財産は対象外です。 

相続時精算課税制度は、贈与者から生前に財産を贈与される場合に、贈与額が2,500万円までの部分には贈与税がかからず、2,500万円を超えた部分にのみ贈与税が課される制度です。相続時精算課税制度を通じて取得した財産は、形式上は相続税の課税対象となる場合があっても、物納には利用できません。 

つまり、土地や建物を贈与されていても、相続時精算課税制度による贈与の財産であれば物納には使えないため、注意が必要です。 

1-2-3 優先順位の高いものから順に納めること 

物納できる財産には優先順位が定められており、原則として以下の順にしたがって納める必要があります。納税者が自由に「この財産で納めたい」と選ぶことはできず、税務署の判断に基づきます。 

優先順位 

財産の種類 

補足 

第1順位 

不動産、船舶、国債・地方債、上場株式 

価値が安定して換金しやすい財産 

第2順位 

非上場株式 

第1順位の財産がない場合に物納可能 

第3順位 

動産 

特別な事情がある場合や先順位の財産がない場合に物納可能 

1-2-4 申請書の提出期限を守っていること 

物納の申請には期限が設けられており、原則として相続税の申告期限である「相続開始から10か月以内」に物納申請書を提出する必要があります。 

また、提出するだけでなく、必要書類に不備がないことも重要です。不備や期限の遅れがあると、物納申請が却下される可能性があります。 

そのため、物納を検討する場合は、税理士などの専門家に早めに相談し、余裕をもって準備を進めると安心です。 

2.物納申請の手続きを確認しましょう 

物納を行うには、単に「物納したい」と申告するだけでは認められません。まずは、物納できる財産や条件を確認し、必要書類を揃えたうえで税務署に申請する必要があります。 

物納申請の手続きはステップごとに決まっており、申請書や添付書類の不備、提出期限の遅れがあると認められないことがあるため注意が必要です。物納の申請に必要な手続きを順番に解説します。 

2-1 物納する財産を決定する 

物納を申請する最初のステップは、どの財産を物納に充てるかの選定です。対象となる財産は、国内にある土地や建物、国債や株式などで、先に解説した優先順位や条件を踏まえて、納税に充てられる財産をリストアップしておきましょう。 

物納に適しているかどうかは税務署の審査を受ける必要があるため、事前に財産の評価や権利関係を確認しておくと、手続きをスムーズに進められます。 

2-2 必要書類を準備する 

物納申請には、以下のような書類を揃える必要があります。 

  • 物納申請書:物納を申請するための基本書類で、物納する税額や金銭での納付が困難である理由を記載します。現預金や生活費、臨時収入・支出など、具体的な数字も示す必要があります。
  • 物納財産目録:物納する財産の詳細情報を記載します。土地や建物の場合は登記事項証明書の情報や利用状況、国債や株式の場合は種類や数量、金融機関名などを明記します。
  • 相続関係を証明する書類:戸籍謄本、遺産分割協議書など、相続人や相続財産を確認できる書類です。
  • 物納手続関係書類:財産ごとに必要な添付書類で、土地であれば住宅地図や地積測量図の写しなど、法令で定められた書類を準備します。 

書類に不備があると、物納申請が認められない場合があります。提出前に必ず確認し、必要に応じて税理士などの専門家に相談すると安心です。 

2-3 必要書類を税務署長に提出する 

必要書類が揃ったら、被相続人の死亡時における住所地を所轄する税務署長に提出します。提出後は税務署の審査が行われ、物納が認められるかどうか判断されます。 

提出前に申請書や添付書類に不備がないかを必ず確認してください。不備や不足があれば、通知を受けた日の翌日から20日以内に訂正や追加で提出を行わなければなりません。期限内に対応できない場合は、「物納手続関係書類提出期限延長届出書」を提出することで、1回につき3か月を限度として、最長で1年まで提出期限を延ばせます。 

税務署長は、物納申請書の提出から原則3か月以内に許可または却下を決定します。申請財産の状況によっては、最長で9か月まで延長されることがあります。書類を期限内に過不足なく準備することが、物納申請をスムーズに進めるポイントです。 

2-4 利子税の納付 

物納を利用する場合でも、延納と同様に利子税を納める必要があります。利子税は、相続税を現金で納めずに納税を猶予してもらうことへのコストにあたるもので、物納を申請しないで納付が遅れると延滞税が課されるおそれがあるため注意が必要です。

利子税がかかる期間は、物納が許可された場合と却下された場合で以下のように異なります。 

  • 許可された場合:相続税の納期限(または納付すべき日)の翌日から、物納財産が収納された日までの期間に利子税がかかります。
  • 却下された場合:納期限の翌日から却下の日までの間に利子税がかかります。
  • 申請を取り下げた場合:納期限の翌日から延滞税が課されます。 

物納を申請する際には、利子税の金額や納付期限もあわせて確認し、余裕をもって対応しましょう。 

3.物納は不動産売却と比較検討されることが多くあります 

相続税を現金で納められないとき、多くの人がまず考えるのが「物納」か「不動産の売却」です。物納は便利な方法に思えますが、実際には認められる条件が厳しく、誰もが利用できるわけではありません。 

そのため、物納と不動産売却のどちらを選ぶべきかを比較検討することが重要になります。それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく整理して解説します。 

3-1 物納のメリットとデメリット 

物納には現金が不要という大きな魅力がある一方で、利用できる条件が非常に厳しいという特徴があります。主なメリットとデメリットを整理してみましょう。 

メリット 

  • 現金を用意せずに相続税を納めることができる 
  • 不動産を売却せずに済む 
  • 譲渡所得税や仲介手数料が不要 
  • 固定資産税が軽減される場合がある 

デメリット 

  • 利用の要件が厳しい 
  • 財産の種類ごとに優先順位があり自由に選べない 
  • 市場価格ではなく相続税評価額で扱われる 
  • 利子税がかかる 
  • 事前準備に時間と手間がかかる  

このように、物納は資金繰りの解決策にはなりますが、利用できるのは限られたケースにとどまるため、最後の手段として考えておく必要があります。 

3-2 不動産売却のメリットとデメリット 

相続税の納付にあたり、不動産を売却して現金化する方法もよく選ばれます。現金化すれば資金を自由に使って相続税を納められ、遺産分割の柔軟性も高まるため、物納と比較して検討されることが多い方法です。 

物納ほど準備に手間がかからず、利子税の負担もない点で大きなメリットがあります。さらに、売却価額が相続税評価額より高ければ、手元に資金が残る可能性もあります。 

メリット 

  • 自由に資金を使って相続税を納めることができる
  • 遺産分割の柔軟性が高まる 
  • 物納ほど手間がかからない 
  • 利子税がかからない 
  • 売却価額が相続税評価額より高ければ資金が手元に残る 

デメリット 

  • 売却に時間がかかる場合がある 
  • 市場価格によって売却額が変動する 
  • 売却益には譲渡所得税が課される 
  • 仲介手数料などのコストが発生する 

上記のように、不動産売却は現金化が可能で柔軟性の高い方法ですが、売却までに時間がかかったりコストが発生したりする点に注意が必要です。 

3-3 どちらで納税する方がお得なのかは時と場合によって異なる 

物納と不動産売却、どちらが有利かは、相続財産の内容や納税資金の状況によって異なります。不動産の評価額や流動性、相続人の希望などを総合的に考慮し、選択すべき方法を判断するのが重要です。 

一般的には、不動産を売却して現金を準備する方が現実的ですが、売却が難しい場合や時間的に余裕がない場合には物納が有効な選択肢となります。最終的な判断は専門家に相談し、リスクとメリットを比較したうえで決定するのがおすすめです。 

4.注意点を確認しましょう 

物納は便利な制度ではありますが、誰でも自由に使えるわけではなく、注意すべき点がいくつもあります。手続きの失敗やトラブルを未然に防ぐため、物納を検討する際に知っておくべき注意点を整理します。 

 

4-1 「物納」を選択できるのは相続税のみ 

物納は、相続税の納付に限って認められる制度です。贈与税や所得税など、他の税金には適用できません。 

相続税は高額になりやすく、また、相続財産の多くが現金ではないためすぐに処分できない場合もあります。そのような場合に、相続財産そのものを国に納め、納税に充てることが認められているのです。 

4-2 物納できない財産もある 

すべての財産が物納できるわけではありません。例えば、海外にある資産や相続時精算課税制度で贈与された財産のほか、担保権が付いている不動産や境界が不明確な土地、老朽化して利用できない建物などは「管理処分不適格財産」として扱われます。 

また、譲渡制限株式や権利関係が争われている株式なども物納の対象外です。つまり、国が換価や管理に支障をきたす財産は原則として物納できないと理解しておく必要があります。 

4-3 任意で申請を取り消すと延滞税が課される 

物納の申請をした後でも、任意で取り下げを行えます。ただし、申請を取り下げた時点で納付期限を過ぎていれば、納税が遅れたものとみなされ、延滞税が課されてしまうので注意しましょう。 

延滞税は利子税よりも高い税率で計算されるため、負担が大きくなる可能性があります。物納を検討する際は安易に申請せず、あらかじめ税理士などの専門家に相談してから判断することをおすすめします。 

4-4 「物納」は認められるケースが少ない 

実際に物納が認められるケースは非常に限られています。物納申請には一定の要件があり、手続きに時間がかかるうえ、税務署による審査も厳しいのが現状です。 

平成18年の税制改正以降、審査がさらに厳しくなったこともあり、年間に物納申請が認められる件数は多くありません。そのため、物納を検討する場合は、納税資金の準備なども含めて計画的に進める必要があります。 

5. まとめ 

相続税の物納は、現金での納付が難しい場合の最終手段ですが、誰でも自由に利用できるわけではなく、厳格な要件や手続きがあります。国内財産であること、相続時精算課税制度による贈与でないこと、優先順位に従うこと、申請書の提出期限を守ることなど、さまざまな要件を満たさなければなりません。 

物納を行う際は、必要書類の準備や税務署への提出、利子税の納付も忘れずに行いましょう。物納は不動産売却と比較しても認められるケースが少なく、申請が却下されるリスクもあります。 

そのため、できるだけ物納に頼らず、早めに納税資金を準備しておくことが重要です。

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