遺産分割協議書とは
相続手続きを進める上で耳にする遺産分割協議書という書類があります。
遺産分割協議書はご自身で作成することもできますが、専門家に作成を依頼した場合、当然ながら費用がかかることになります。
まず遺産分割協議書を作成しなければならないのか、作成しなければならないのであればご自分で作成して余計な出費を抑えたいと考える方もいらっしゃるでしょう。
遺産分割協議書はご自身で作成する場合、作成にあたってあらかじめ知っておきたいルールが存在します。
また、そもそも遺産分割協議書とは何か、いつ必要になるのか等を知っておくことはとても重要といえます。
こちらでは、遺産分割協議書についてのご説明と、ご自分で作成する際の流れや押さえておきたいポイントについて解説いたします。
遺産分割協議書が必要となる手続きを事前に把握して、スムーズな相続手続きのためにもぜひご参考にしていただければと思います。
1.遺産分割協議と遺産分割協議書について
ご家族が亡くなると故人の財産は相続人全員の共有の財産となります。
そのため、「どの財産を誰がどれだけ取得するか」について相続人全員で話し合う必要があります。
この話し合いのことを「遺産分割協議」といい、遺産分割協議で相続人全員が納得のうえ合意した内容を書面化したものを「遺産分割協議書」といいます。
遺産分割協議書は相続人全員の合意がとれたことの証明書として必要になりますので、全員の署名押印をした遺産分割協議書を作成することが望ましいと言えます。
相続手続きでは、預貯金の払戻しや不動産の名義変更、相続税申告などあらゆる場面で遺産分割協議書の提出が求められます。
また、一旦合意したにもかかわらず、後になって決定内容について「言った、言わない」とか「これもほしい」とか、文句をつけてくる相続人も少なくありません。決して口約束で済ませることだけはせず、トラブル回避の手段としても遺産分割協議書は作成しておくと良いでしょう。
遺産分割協議書を自分で作成するのが不安な方は、相続が開始した早い段階で専門家に相談することをおすすめします。
2.遺産分割協議書が必要な手続き
遺産分割協議書は相続手続きの中で様々な場面で必要となるのですが、具体的にどの手続きで必要になるのか確認していきましょう。

2-1.不動産の相続登記【法務局】
土地や建物といった不動産を相続した相続人は、法務局で被相続人が所有していた不動産の名義を相続人へ変更する所有権移転登記(相続登記)をします。法定相続分通りに相続登記する場合は、遺産分割協議書は必要ありません。なお、令和6年4月1日から相続登記が義務化され、申請期限が設けられたことにより「相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の取得の事実を知った時から3年以内」に相続登記を行わないと、罰則が課せられることになりました。
なお、令和6年4月1日以前の相続も、相続登記の義務化の対象です。
相続登記の申請手続きは複雑ですので相続登記の専門家に相談することをおすすめします。
2-2.預貯金の払い戻し等【銀行など】
預貯金を相続した場合は、銀行などの預金先で預金の払い戻しの手続きをします。銀行所定の用紙に相続人全員の署名と実印の押印をすることで、遺産分割協議書がなくても払戻しの手続きをすることは可能ですが、遺産分割協議書があれば、銀行所定の用紙には相続人の署名と実印のみで手続きすることができるため、手続きの手間を省けます。
提出書類:遺産分割協議書(遺言書)や被相続人の戸籍謄本、法定相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書など
提出書類については預金先によって異なりますので事前に確認しておきましょう。
2-3.有価証券の口座移管【証券会社など】
有価証券(上場株式や投資信託など)を相続した場合は、株式口座のある証券会社に出向き、被相続人の証券口座から法定相続人の証券口座に移管手続きをします(非上場株式の場合は発行会社)。手続きをしなければ、株の売却をしたり、配当金を受けとることはできません。
提出書類:証券会社所定の書類や遺産分割協議書、被相続人や法定相続人の戸籍謄本
提出書類については相続状況によって異なりますので事前に確認しておきましょう。
2-4.自動車の名義変更【運輸支局など】
自動車を相続した場合は、運輸支局などで移転登録の申請(名義変更)をします。自動車保険に加入したり、車検を通す必要があるようでしたら、早急に手続きをおこないましょう。
なお、相続した自動車をすぐに売却する場合や廃車にする場合でも、名義変更をしなければ売却、廃車にすることはできません。自動車の名義変更は、その自動車の種類に応じて、手続きを行う場所が変わります。なお、手続き先は自動車の種類によって異なるため、事前確認が必要です。
2-5.相続税申告【税務署】
相続税申告が必要な場合は、遺産分割協議書の提出が必要となるため、相続税の申告期限である「相続が開始したことを知った日の翌日から10か月以内」に遺産分割協議書を作成しておきます。
ただし、相続税は、相続人すべてにかかるものではありません。まずは相続税申告が必要かどうか確認します。相続税の基礎控除を計算して、被相続人の遺産総額から、債務や葬式費用等を差し引いた金額が、相続税の基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を超えなければ、相続税の申告・納付は不要です。
なお、相続税の減額に繋がる特例の適用には、相続税の申告が必要なため、申告期限までに遺産分割協議をまとめ、遺産分割協議書を作成しておく必要があります。
3.遺産分割協議書が不要な場合
前項で、遺産分割協議書を作成しておくと、被相続人の遺産を「誰が何を相続したか」第三者に証明することができるため、作成する事が望ましいとお伝えしましたが、遺産分割協議書は、被相続人が自身の財産の分割の希望について記載した遺言書を残していた場合には、原則として遺言書の内容が優先されるため、作成する必要はありません。また、相続人が1人の場合には、その人がすべて相続することになるため、遺産分割協議は不要です。
以下のような場合には、遺産分割協議を行ってから遺産分割協議書を作成する必要があります。
- 遺言書がなく、法定相続分とは異なる内容で遺産分割を行いたい
- 遺言書に記載のない財産が見つかった
- 遺言書はあるが、相続人全員が遺産分割協議をすることに合意がある(遺産分割協議禁止等の記載がない場合)
4.遺産分割協議書作成の流れ
遺産分割協議書は下記のような流れで作成します。

前項で触れたように、相続手続きにおいては、原則として遺言書の内容が優先されるため、遺産分割協議書を作成する前にまずは遺言書の有無を確認します。遺言書が見つかった場合は遺産分割協議を行う必要はなく、遺産分割協議書も不要です。
なお、被相続人の自宅などで「自筆証書遺言」が見つかった場合には、家庭裁判所における「検認」手続きを行うまで開封してはいけませんのでご注意ください。
4-1.相続人を調査し確定する
遺産分割協議は相続人全員が参加しなければ成立することができません。ご家族だけが相続人であるとは限らず、法定相続人には、被相続人が認知した子や養子など知らない人が含まれるケースもあります。そのため、すべての相続人を把握し確定させるため、市役所で「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本)」などを取り寄せる必要があります。なお、法定相続人は、被相続人の配偶者・子ども(孫)・父母(祖父母)・兄弟姉妹(甥姪)が該当しますが、各ご家庭により誰が相続人になるかは異なります。
4-2.被相続人の財産を調査し確定する
被相続人が所有していた遺産分割協議の対象となる財産を調べて確定し財産目録を作成します。
相続財産は、プラスの財産(預金・不動産・有価証券・車など)だけではなく、マイナスの財産(借入金・ローン・未払金など)も含まれるため注意が必要です。
調査方法としては、被相続人の預金通帳、エンディングノートなどを調べますが、パソコン等でネット銀行、ネット証券会社などのデジタル遺産の有無も確認しましょう。
ローンや借金については、郵便物を確認するか借り入れ先に直接問い合わせて債務額を確定します。
調査漏れした財産については、遺産分割協議書に記載の無い財産の取り扱いについての対応を明記しておくか、別途協議を行うことになります。
4-3.相続人全員で遺産分割協議を行う
相続人と相続財産の確定後は、相続放棄した相続人などを除いた相続人全員で遺産分割協議を行います。
この場合、相続人全員が一つの場所に集まる必要はなく、電話やメール等で意思の確認を得る方法でも構いません。
相続人には各法定相続分が定められていますが、遺産分割協議で全員の合意が得られれば、必ずしも法定相続分通りに遺産分割をする必要はありません。
また、もしも相続人のなかに未成年者や認知症や知的障害などで判断能力の低下が見られる方が含まれる場合には、後見人を付けて協議に参加してもらいます。
なお、遺産分割協議で相続人全員の合意を得られない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を行います。さらに合意に至らなければ遺産分割審判となり、家庭裁判所が遺産分割を決めることになります。
4-4.遺産分割協議をもとに遺産分割協議書を作成する
相続人全員の合意をもって、遺産分割協議がまとまったら、その内容を書面化した遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書の書き方に決まりはありませんが、記載必須事項があるため下記をご確認下さい。
<遺産分割協議書の必須記載事項>
- 被相続人の名前および死亡日
- 相続人が遺産分割内容に合意している旨の文言
- 相続財産の詳細な分割内容(口座番号なども)
- 相続人全員の名前・住所と実印の押印
5.専門的な知識が必要
遺産分割協議は自分で作成できますが、一定のルールを守らなければなりません。
例えば、作成日・被相続人の情報・法定相続人の情報・遺産の内容や分割方法は必ず記載を求められますし、法定相続人全員が署名と実印で押印する必要があります。
一定のルールを守った上で、第三者が見ても分かるように遺産分割協議書にまとめるためには、専門的な知識が必要となります。
5-1.不備があると手間も時間もかかる
遺産分割協議書を自分で作成しても、不備があると提出先から差し戻されることもあります。
不備があった遺産分割協議書の訂正をするためには、法定相続人全員の訂正印が必要となります。
また、不備が多い場合は遺産分割協議書を作り直すこととなり、二度手間になってしまいます。
結果として相続手続きがスムーズに進まず、期限が定められている相続手続きに間に合わないことも考えられます。
5-2.債務の取扱いに誤りがあることも
被相続人に債務(借金・未払金など)があっても、基本的に遺産分割協議の対象にはならず、原則として、法定相続人の法定相続分に応じて相続することとなります。
そのため、「債務は○○が相続する」と遺産分割協議書に記載をしても、その通りには分割されません。
特定の法定相続人が債務を相続する場合は、法定相続人全員のみならず、金融機関などの債権者の承諾も必要となります。
このように遺産分割協議書の作成には専門知識がなければ手間や時間がかかりますし、それぞれのご家庭の状況によって注意するべきことが異なるため、専門家への相談をおすすめします。
6.さいごに
遺産分割協議書は、相続人同士で話し合い、合意した分割内容を第三者に明らかにできる書面です。全ての手続きに期限が設けられているわけではありませんが、早めに作成するにこしたことはありません。特に相続税の申告・納付が必要な方は期限がありますので、相続した不動産を売却して納税資金とする方などは相続登記が必要ですので、スケジュールを逆算して早めに遺産分割協議を済ませ、遺産分割協議書を作成しておきましょう。
7.遺産分割協議書の作成は相続の専門家へ
ここまでお読みいただき、遺産分割協議をご自身で作成するメリットとデメリットについてご理解いただけたのではないでしょうか。間違いのない相続手続きのためにも[siteName]の相続の専門家へご依頼を検討されることをおすすめします。
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