固定資産税評価額と相続税評価額の違いは?それぞれの計算方法や節税のコツを解説

相続税申告において特に人々を悩ませるのが、土地や建物といった不動産の評価額です。
土地・建物の評価額には、固定資産税評価額と相続税評価額の2種類があります。
正しく納税を行うには、それぞれの評価額を知る方法、および何の税にどちらの評価額が採用されるのかを覚えておかなければいけません。
今回は固定資産税評価額と相続税評価額、それぞれの確認方法を解説していくので、確定申告や遺産相続を控えている方はぜひ参考にしてみてください。

 

1.固定資産税評価額と相続税評価額を区別しましょう

固定資産税評価額に関しては、自治体が公表したものを課税明細書などで確認すれば分かります。
一方で相続税評価額の場合は、国税庁が公表する路線価や倍率を用い、自ら金額を算出しなければいけません。
以下で詳しく見ていきましょう。

 

1-1.固定資産税評価額とは?

固定資産税評価額とは、固定資産税や都市計画税、の基準となる土地・建物の評価額です。
土地の評価には、道路に面する標準的な土地の1㎡価格「固定資産税路線価」が採用されており、これに画地調整を行い、課税対象の土地の面積をかけたものが固定資産税評価額となります。
固定資産税路線価は、一度発表されると原則3年間据え置かれますが、地価が大きく下落した場合はこの限りではありません。

建物の評価には、同じ土地に同じ建物を新築すると仮定して、その費用を試算する「再建築価格方式」が採用されます。
固定資産評価員が実地調査を経て作成した評価調書をもとに、市町村長が毎年3月末までに価格を決定し、固定資産課税台帳などに登記するのが基本的な流れです。
再建築価格の計算には、資材費や設計管理費など実際の建築にかかった費用が用いられるため、単純な話、高価な家ほど固定資産税も高くなります。

1-2.固定資産税を確認する方法

固定資産税評価額は自治体が公表するものであり、所得税のように自ら算出する必要はありません。
以下のいずれかの書類を取得すれば、最新の固定資産税額はすぐに分かります。

1-2-1.固定資産税の課税明細書

固定資産税の課税明細書とは、土地・建物区分や評価額といった課税の内訳が記された書類であり、納税通知書を同封した上で例年4月~5月に発送されます。

1-2-2.固定資産評価証明書

固定資産評価証明書とは、固定資産評価の基となる土地・建物の詳細な情報が記載された書類です。
具体的には土地の地積や地目、建物の規模や構造、およびそれぞれの所有権情報などが書かれています。
加えて、固定資産税評価額や課税標準額(評価額に各減免制度を適用した額)も載っています。
不動産取得税や登録免許税など、課税明細書に記載されない税額を求める場合は、予め固定資産評価証明書を取得する方が手っ取り早いでしょう。
固定資産評価証明書は市区町村が発行しており、窓口申請の場合は必要書類が揃っていればその場で受け取れ、郵送申請の場合は申請後1~2週間程度で自宅に届きます

1-2-3.固定資産課税台帳

固定資産課税台帳とは、土地・建物の所在や評価額などについて、市区町村で作成・保管されている帳簿です。
課税台帳には住宅のみならず、設備や車両といった償却資産の評価内容も記されており、事業を営んでいる方にとっては税申告に必須の情報といえます。
他には、未登記の土地・建物に関する補充課税台帳も存在しますが、2024年4月より全ての不動産において登記が義務化されているため、現状特に使い道はありません。
固定資産課税台帳は市区町村の担当部署でいつでも閲覧できるほか、記載事項証明書を発行することも可能です。

1-3.相続税評価額とは?

相続税評価額とは、亡くなった被相続人が所有していた財産のうち、相続税の課税対象となるもの全てを評価した価額です。
相続税のほか、不動産にかかる贈与税の計算にも用いられます。
固定資産税評価額が通知段階であらかじめ算出されているのに対し、相続税評価額は相続人自身が計算しなければいけません。
それでいて、申告内容に誤りがあると過少申告加算税や延滞税を課されてしまいますから、相続税評価額に関する知識は早いうちに身につけておきましょう。
なお、相続税には基礎控除(3,000万円+法定相続人数×600万円)が設けられており、相続税評価額の合計が基礎控除額以下の場合は申告自体が免除されます。

1-4.相続税評価額を用いて土地や建物の評価が出来ます

相続税評価額を用いた土地の評価方法は、路線価方式と倍率方式に大別されます。
一方で建物の相続税評価額は、原則として固定資産税評価額と同額ですが、貸家の場合は補正計算によって幾分か評価額を減額できます。
以下で詳しく見ていきましょう。
(本記事は宅地を対象としているため、農地や山林などに適用される「宅地比準方式」については割愛します)

1-4-1.土地の評価方法①:路線価方式

路線価とは、路線ごとに付された標準的な宅地の1㎡あたりの価額です。
路線価に基づく土地の相続税評価額は、以下の式で求められます。
土地の相続税評価額=路線価×画地調整×地積
路線価や奥行価格補正率表の画地調整率は国税庁HPより確認できます。

2つの道路に面する角地などの土地については、各道路の路線価から求めた相続税評価額を合算しなければいけません。
計算方法としては、まず「路線価×奥行価格補正率」がより高くなる方を正面道路とし、通常通り相続税評価額を求めます。
その上でもう一方の道路には、側方路線や二方路線の影響加算率(いずれも国税庁HPに掲載)を以下の式の通りに反映しましょう。
側方路線や二方路線の加算額=路線価×奥行価格補正率×側方路線または二方路線影響

ガケ地や不整形地、間口の狭い土地などでは、さらに個別の補正計算が必要になります。 路線価方式での相続税計算に少しでも不安や不明点がある場合は、早いうちから税理士事務所に相談してください。

1-4-2.土地の評価方法②:倍率方式

農村地帯をはじめとした市街化調整区域では、道路に路線価が定められていないケースがほとんどです。
このようなエリアを倍率地域と呼び、相続税評価額の求め方が以下のように変わります。
倍率地域における土地の相続税評価額=固定資産税評価額×評価倍率
県別の倍率地域、および具体的な評価倍率は、路線価と同じく国税庁HPより確認可能です。
同じ市町村でも地域によって評価方式が異なる場合もありますが、路線価エリアの場合は倍率表に「路線」と書かれているため、間違える心配はありません。
とはいえ倍率方式にも、地積規模や都市計画道路など様々な要因で補正が適用されるため、相続税をできるだけ抑えたい場合は税理士の力を借りるのがおすすめです。

1-4-3.建物の評価方法

建物の相続税評価額は、原則として固定資産税評価額と同額であり、改まって何かを計算する必要はありません。
しかし、貸家の場合は借家権割合(全国一律30%)や賃貸割合を加味することで、相続税評価額を大なり小なり減額できます。
具体的な計算プロセスは以下の通りです。
① 賃貸割合=入居状態の部屋の床面積合計÷貸し部屋全ての床面積合計
② 貸家の相続税評価額=固定資産税評価額×(1‐0.3×賃貸割合)

なお、貸家の土地部分は以下のように評価します。
貸家建付地の相続税評価額=自用地として評価した相続税評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
借地権割合は財産評価基準書の路線価図にて、A(90%)からG(30%)の7段階で記載されています。

2.節税するには?

土地・建物にかかる税金を節約するには、固定資産税評価額を下げるのが一番の近道です。
以下で詳しく見ていきましょう。

2-1.土地の固定資産税評価額を下げることができるか確認しましょう

土地の固定資産税評価額を下げるにあたって、まず利用したいのが「住宅用地の特例」です。
この特例では、住居が建っている土地の固定資産税評価額が、200㎡の範囲まで6分の1、200㎡超の部分も3分の1になります。
さらに固定資産税評価額を下げたい場合は、以下の2点に取り組んでみてください。

2-1-1.分筆

分筆とは、1つの土地を複数に分割する手続きです。
主に土地の一部を転用ないし売却する目的で行われるものですが、固定資産税評価額を下げる手段としても有効な場合が多々あります。
最も単純な例は、道路に面さない土地ができるよう境界を設けた場合です。
建築物の敷地には最低幅2mの接道義務があり、これを満たさない土地では新たな建築を行えないため、固定資産税評価額が大幅に下がります。
また、分筆をめぐっては住宅用地の特例を適用できなくなるリスクがよく指摘されますが、これは建物をまたぐように境界を設けることで解決可能です。

ただし、分筆を行うにあたっては土地家屋調査士への依頼が必須で、その費用は数十万円に上ります。
必要書類の多さも相まって、短期的には大きな負担となるでしょう。
また、評価額が大幅に下がることは、後々の売却が難しくなることにもつながるので、分筆を行うべきかは専門家と相談を重ねた上で判断してください。

2-1-2.公衆用道路か確認

所有している土地に私道が含まれる場合は、その道が公衆用道路(不特定多数の人が往来する道)であるかを確認しましょう。
公衆用道路であれば、その面積分は固定資産税や都市計画税が一切かかりません。
また相続税評価においても、通り抜け可能な公衆用道路であれば非課税となり、行き止まりがある場合も相続税評価額が本来の30%まで低減されます。
ただし、私道を公衆用道路として免税・減税処置を受けるには、法務局や市区町村への認定申請が必須です。

2-2.建物の固定資産税評価額を下げることができるか確認しましょう

続いて建物、特に集合住宅の固定資産税評価額を下げる方法について見ていきます。

2-2-1.認定長期優良住宅制度を活用しましょう

建物に関しては「新築住宅に関わる税額の減額処置」が存在し、令和6年4月1日~令和8年3月31日の間に建物を新築すると、固定資産税が一定期間2分の1に減額されます。
減額期間は一軒家の場合で原則3年、マンションなどの集合住宅は原則5年ですが、認定長期優良住宅と認められるとそれぞれ2年間延長されます。

認定長期優良住宅と認められるには、耐震性や断熱性、省エネルギー性など様々な住宅性能が各基準を満たしていなければいけません。
そこで併用したいのが、リフォームにおける固定資産税軽減です。
令和8年3月31日までの期間限定で、耐震補強やバリアフリー化、省エネ改修といったリフォーム工事で固定資産税の減額処置を受けられます。(詳細はこちら

また、賃貸物件の場合は、固定資産税を不動産所得の経費に計上することで、所得税の節約にもつながります。

2-2-2.マンションなど集合住宅の場合は空室を作らないようにしましょう

集合住宅における相続税評価額の軽減率は、賃貸割合に比例します。
普段からできるだけ空室を作らないためにも、営業活動や住環境維持には普段から力を入れて取り組みましょう。
なお、相続時期にたまたま空室になってしまった部屋に関しては、税務署に相談することで入居状態と認められる場合があります。
入居状態と認められる主な条件は、空室の期間が相続前後1か月間ほどで、かつ同じ期間に空室を他の用途に供していないことです。

3.遺留分を計算する時には時価で計算します

遺留分とは、被相続人の配偶者や子供に保証された遺産の取り分です。
遺言書の内容に係わらず、配偶者と子供を合わせて最低でも遺産の2分の1を受け取る権利があり、これを第三者に侵害されている場合は不足分を請求できます。
不動産の遺留分を計算する手段は色々ありますが、一般的に最も高額を請求できるのは、不動産会社に時価(実際の取引価格)を査定してもらう方法です。
土地の地形などによっては、路線価や固定資産税評価額を基準とした方が高額になる場合もあるので、これらも念のため一度求めておくといいでしょう。

4.まとめ

以上、固定資産税評価額と相続税評価額の違い、および土地・建物の節税に繋がる様々な制度や取り組みについて解説しました。
固定資産税や相続税の求め方に不明点のある方、および納税額の大きさに困っている方は、ぜひ一度ランドマーク税理士法人にご相談ください。

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