
ここ数年、「一般社団法人を作れば相続税や贈与税を抑えられるらしい」といった情報を見聞きし、興味を持たれる方が増えています。一方で、実際に制度を調べてみると、専門用語や法改正の経緯が複雑で、「何が本当に認められていて、何が問題視されているのか」が分かりにくいのも事実です。
かつては、資産を一般社団法人に移しておくことで、相続税の対象から外せるのではないかと考えられた時期もありました。しかし、その後の税制改正により、形式だけで税負担を軽くしようとするスキームは厳しくチェックされるようになっています。
当記事では、一般社団法人の基本的な仕組みを押さえつつ、「社団節税」と呼ばれてきた考え方がどのように変化してきたのかを整理します。そのうえで、現行制度のもとで検討できる活用方法や、見落としやすいリスクについても触れていきます。
1. 一般社団法人を活用した節税の仕組みと現在のリスク
一般社団法人は、株式会社のように出資者の利益を最大化するための器ではなく、「特定の所有者を前提としない団体」として位置づけられています。この性質を利用して、相続や贈与の場面で税負担を軽くしようとする手法が広がった時期がありました。
ただし現在では、法改正や通達の整備によって、家族だけで運営する法人を使った節税策は厳しく制限されています。同じ「一般社団法人」であっても、設立の目的や運営のされ方によって、税務上の評価が大きく変わる点に注意が必要です。
まずは、どのような考え方で一般社団法人が節税に使われてきたのか、そして現在の制度ではどこにリスクがあるのかを、順番に確認していきましょう。
1-1. 節税に使われる「一般社団法人」とは?
一般社団法人は、株主や持分といった概念を前提としない法人です。誰か特定の個人が出資割合に応じて利益を受け取る仕組みではなく、定款で定めた目的に沿って活動し、その過程で生じた利益も法人内部に留めておくことが基本的な考え方になります。
この点が、相続や贈与の場面で話題になる理由のひとつです。個人が持っている不動産や有価証券を法人名義に切り替えることで、「個人の財産として扱われる部分を減らせるのではないか」という発想が生まれやすいからです。
もっとも、本来の一般社団法人は、医療・教育・地域貢献など、社会的な活動の受け皿として用いられることを想定した仕組みです。節税だけを目的として形だけの法人を作ると、税務上のチェックが厳しくなりやすく、かえって負担が増える結果にもつながりかねません。
「一般社団法人=節税の道具」と短絡的に捉えるのではなく、制度の成り立ちと求められている役割を理解したうえで検討することが重要です。
1-2. 節税の仕組み(かつての構造と現行制度)
一般社団法人をめぐる節税の議論は、「個人の資産をどこで保有するか」という発想から出発しています。例えば、不動産や株式などを本人の名義で持ち続けると、そのまま相続財産として評価されますが、これらを生前に法人に移しておけばどうなるのか、という問いです。
かつては、次のような組み立て方が注目されました。
- 生前に不動産や株式を一般社団法人に移転する
- 本人や家族が理事として法人運営に関与する
- 相続時点では資産が法人名義となっているため、個人の相続財産から切り離せるのではないか
こうした考え方を前提に、「一般社団法人に資産を集約すれば相続税や贈与税を抑えられるのではないか」というスキームが一部で広がりました。しかし、こうした使い方は、形式上は法人であっても実質的には家族の資産承継に使われているのではないか、と長らく問題視されてきた経緯があります。
その結果、2018年の税制改正で「特定一般社団法人等」に対する課税ルールが整備され、一定の条件に該当する法人については、法人が保有する純資産に対して贈与税相当の課税が行われる仕組みが導入されました(相続税法第66条の2など)。
現在は、相続開始前の一定期間に同族色の強い理事構成が続いている場合など、一定の要件に該当すると判断される法人について、特定一般社団法人等として扱われ、法人が保有する純資産額を「同族理事の人数+1」で割った金額を基準に課税するルールが設けられています。そのため、「家族だけで運営する社団を使えば税金を抑えられる」という単純な発想は、一定の要件を満たさない限り、制度上成り立ちにくくなっているのが実情です。
重要なのは、「社団を使えば自動的に節税になる」という図式ではなく、どのような体制と目的で法人を設計するかによって、税務上の評価が大きく変わるという点です。
2. 一般社団法人の設立の流れ
一般社団法人の設立は、株式会社よりも手続きがシンプルですが、法的要件を満たす必要があります。また、資産承継や節税効果も視野に入れて一般社団法人を活用する場合には、社員構成・定款内容・理事体制など、税務署に「実態ある法人」と認められる設計が欠かせません。
ここでは、設立の全体像とともに、各ステップで注意すべきポイントを順に見ていきましょう。
2-1. 法人の目的を決め、社員を2名以上集める
一般社団法人の設立では、最初に「法人の目的」と「社員構成」を明確にすることが重要です。社員とは出資者ではなく、法人の意思決定に参加する構成員を指します。
設立段階での設計が、後の税務リスクや信頼性を大きく左右します。
▼設立時に決めるべきポイント
- 法人の目的を明確化する
公益性や実態ある事業目的を設定し、「節税のため」といった目的記載は避ける。例えば、地域医療支援・不動産管理・教育事業など社会性のある活動内容が望ましい。
- 社員構成を検討する
「社員」は法人の構成員であり、出資者ではない。意思決定に関与する立場になる。親族のみで意思決定や理事構成を占める状態が続くと、「同族色が強い法人」と判断され、課税リスクが高まるため、第三者を含めることでガバナンスを強化できる。
- 法的要件を確認する
社員は最低2名以上、理事は1名以上が必要。設立後に変更も可能だが、構成次第で税務署の評価が変わるため慎重な判断が求められる。
この初期設計を誤ると、節税どころか「形式だけの法人」と見なされるおそれがあります。目的と体制を整えることが、信頼される法人運営の第一歩です。
2-2. 定款を作る
定款は、法人の基本方針を定める「憲法」のような役割を持つ最重要書類です。法人の目的・名称・事業内容・役員構成など、組織運営の土台となる情報を明確に定義します。
内容次第で税務判断や信頼性に影響するため、慎重に作成する必要があります。
▼定款作成で押さえておくべきポイント
- 定款の役割を理解する
法人の目的・名称・事業範囲・意思決定ルールを明文化する。後のトラブルや税務調査での根拠資料になるため、曖昧な記載は避ける。
- 目的欄の書き方に注意する
「節税」「資産保全」といった目的を記載すると否認リスクが高まる。
例えば、地域医療支援・不動産管理・教育事業など、社会性と実態のある活動内容を記載するのが安全。
- コストと効率を両立させる
電子定款を利用すれば、印紙代4万円を節約できる。作成・認証手続きの効率化にもつながる。
- 専門家のチェックを受ける
記載内容は銀行口座開設や税務処理に影響するため、税理士や司法書士など専門家による確認を推奨。
定款は一度認証を受けると簡単に修正できないため、将来の運営方針を見据えた内容設計が必須です。
2-3. 公証役場で定款の認証
定款を作成したあとは、公証役場で公証人による「認証」を受ける必要があります。これは、定款の内容が法的に有効であることを公的に証明する手続きであり、登記に進むための必須ステップです。
▼認証手続きの概要
- 目的と役割を理解する
認証とは、定款が法律に適合していることを公証人が確認し、正式な証明を与える手続き。これを行わないと設立登記ができず、法人格が発生しない。
- 費用と申請方法
認証手数料は約3万円~5万円。電子定款を利用すれば印紙税(4万円)が不要となり、コスト削減につながる。電子申請が主流で、書類提出よりもスムーズに処理される。
- 公証役場の利用方法
公証役場は都市部を中心に設置されており、予約制が一般的。認証には定款のデータ・社員全員の同意書・本人確認書類などが必要。書類不備があると再提出になるため、事前の確認が重要。
- 認証後の流れ
認証済みの定款は、設立登記に必要な決議書・承諾書などとともに法務局へ提出する準備を進める。
定款認証は「法人の存在を社会的に承認するプロセス」です。慎重に準備を行い、スムーズな登記申請へとつなげましょう。
2-4. 登記書類の作成・申請
定款の認証が完了したら、いよいよ法務局で設立登記を行います。登記が完了すると、一般社団法人は正式に法人格を持ち、社会的に「法的な存在」として認められます。
申請には複数の書類が必要となるため、事前準備を入念に行うことが重要です。
▼登記に必要な主な書類
- 認証済み定款
- 設立時社員の決議書
- 理事・監事の就任承諾書および印鑑証明書
- 代表理事選定書
- 登録免許税の納付書(6万円)
▼申請から完了までの流れ
- 法務局に登記申請書を提出
- 受理後、登記完了まで約1〜3週間が目安
- 登記完了後は、登記簿謄本と法人印鑑証明書を取得し、各種手続きへ移行
▼登記後に行う手続き
- 銀行口座の開設
- 税務署への法人設立届出
- 社会保険・労働保険の加入手続き
書類の不備や印鑑の相違によって、登記申請が差し戻されるケースは少なくありません。そのため、提出前に司法書士など専門家の確認を受けておくと安心です。
登録免許税や手数料を含めた設立費用の目安はおおよそ30〜40万円であり、事前に見積もっておくことで、スムーズに資金計画を立てられます。
3. 一般社団法人を設立するメリット
一般社団法人を活用する最大の魅力は、資産を個人所有から切り離して管理できる点にあります。適切に設計すれば、相続税の圧縮や不動産承継の効率化など、一定条件下で税務上有利に働く場合もあります。
ここでは、一般社団法人を設立することで得られる具体的なメリットを3つの観点から整理します。
3-1. 相続税の節税になる(ただし条件付き)
一般社団法人を活用すると、個人が直接所有している場合とは異なる形で資産を管理できるようになります。その結果として、相続税の負担が相対的に軽くなるケースもゼロではありません。
ただしこれは、「社団を作れば相続税が下がる」という意味ではありません。2018年以降の制度では、親族中心の理事体制が続いている法人や、実態に乏しい法人運営を行っているケースについて、贈与税相当の課税が行われるルールが整備されています。
相続面でのメリットを検討する場合は、
- 親族以外の第三者理事をどのように関与させるか
- 実際にどのような事業や活動を行うのか
- 資産の管理・活用が社会的な目的とどう結びついているか
といった点まで含めて設計する必要があります。これは、節税を目的として設計した結果ではなく、あくまで資産管理の方法として法人を用いた結果、税務上の評価が変わる場合がある、という位置づけです。
形式だけ社団を作る発想では、かえって課税リスクを高める結果になりかねないことを押さえておきましょう。
3-2. 不動産を法人名義で一元管理できる
不動産を一般社団法人の名義で保有しておくと、相続のたびに所有者を細かく分ける必要がなくなります。物件そのものは法人が持ち続け、家族は理事や社員として運営に関わる形を取ることで、賃料収入や維持管理を法人単位で行えるようになるためです。
このような形にしておくと、代替わりのたびに共有持分を整理したり、登記を繰り返し変更したりする手間を減らしやすくなります。長期的に同じ不動産を活用していきたい場合、「誰が何割持っているのか」という個人単位の整理ではなく、法人を通じて一括管理する発想が取りやすくなる点がメリットです。
もっとも、法人名義にしたからといって自由に使えるわけではなく、法人の目的やガバナンス体制に沿って利用することが前提になります。税務面だけでなく、家族間の合意形成や将来の運営体制まで含めて検討することが重要です。
なお、ここで想定しているのは、家族だけで閉じた運営ではなく、必要に応じて第三者理事や専門家も関与させたうえで、ガバナンスを確保しながら不動産を管理していく形となります。
3-3. 社会的な信用とガバナンスを得られる
法人格を持つことで、契約や銀行口座開設を法人名義で行うことができるようになり、社会的な信用を得やすくなります。組織運営が明文化され、意思決定や会計処理が明確になるため、資産管理の透明性も高まります。
これは税務調査時の説明責任を果たすうえでも有利に働きます。さらに、理事会や監査体制を整えることで、外部からの信頼性も向上します。適正な法人運営は、節税のリスクを軽減しながら、安定した事業継続を支える土台になります。
信頼を得る法人であることが、長期的な資産管理の鍵といえます。ただし、こうしたメリットを享受するためには、制度上の制約や運用リスクも十分に理解しておく必要があります。
4. 一般社団法人を使う際のデメリット・注意点
一般社団法人の設立は「節税目的」とみなされると、贈与税や相続税を課される可能性があり、むしろ税負担が増えるケースもあります。そのため、節税効果だけに注目するのではなく、制度上の制約や運用リスクを正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、一般社団法人を活用する際に押さえておくべき代表的な注意点を解説します。
4-1. 自由に使えない資産になる
一般社団法人の資産は、設立者や理事個人のものではなく、あくまで法人に帰属します。個人の裁量で自由に使うことはできず、法人の目的に沿った範囲でのみ使用が認められます。
例えば、不動産や預金を法人名義に移した場合、それらは「法人の持ち物」となり、私的流用は法律違反となります。また、解散時も残った資産は社員に分配できず、他の団体への引き継ぎが必要です。
つまり、一度法人に移した資産は流動性が下がり、個人での自由な運用が難しくなるということです。節税だけを目的に資産を移すと、後悔するケースも少なくありません。
4-2. 否認・課税リスクがある
一般社団法人の設立や運営において、形式だけで実態のない活動を行うと税務署から「節税目的」と判断され、課税対象となるおそれがあります。特に、理事がすべて親族で構成されていたり、報酬設定や寄附金の扱いが不適切な場合、贈与とみなされるリスクが高まります。
国税庁は法人の実態を厳しく確認しており、活動内容・会計処理・意思決定体制の透明性が重視されています。見せかけだけの法人運営は、高額な追徴課税や重加算税を招く結果となりかねません。
リスクを回避するためには、税理士など専門家のサポートを受け、実態のある運営を行うことが重要です。
4-3. 2018年法改正で「節税目的設立」がほぼ不可に
2018年の税制改正以降、親族中心の理事構成を続ける一般社団法人は、一定の条件下で贈与の課税の対象となる仕組みが整備され、「節税目的のみ」で設立することは実質的に困難になりました。
新たに導入された「特定一般社団法人等に対する相続税・贈与税の課税制度」では、5年以内の期間に通算3年以上親族が理事の過半数を占める場合、法人の純資産に対して贈与税が課されます。
つまり、家族だけで運営する法人であっても、一定の要件に該当すると課税対象となり、節税どころか税負担が増すリスクになり得るということです。法人の運営状況や理事構成によって課税判断が変わるため、慎重な対応が求められます。
制度改正以降は、節税を主な目的とするスキームよりも、実態のある資産承継や公益活動としての設立が求められる時代になっています。こうした背景から、一般社団法人を設立する際は「節税のため」ではなく、「資産を安定的に管理・活用する仕組み」として位置づけることが重要です。
5. 節税ではなく「資産を守る仕組み」として一般社団法人を活用しよう!
一般社団法人は、かつて語られたような「抜け道」的な節税手段ではなくなっています。家族だけで運営する法人に資産を集める発想は、今の制度ではむしろ課税リスクを高める要因になりやすいからです。
一方で、資産をどこで管理し、どのような目的で活用していくのかという観点で見れば、一般社団法人という器そのものには依然として意味があります。公益性の高い活動や、特定のテーマに沿った資産管理・支援を長期的に続けたい場合、その受け皿として検討する余地は十分にあります。
大切なのは、「税金を減らすこと」をゴールに据えるのではなく、「自分の資産をどのような形で次の世代や社会につないでいきたいのか」という視点から逆算して制度を選ぶことです。そのうえで一般社団法人が適切な選択肢になり得るかどうかを、税理士や弁護士などの専門家と一緒に検討していくのが安全な進め方といえるでしょう。
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