グリーンライフ知って得する税金の知識バックナンバー

回収不能な賃貸料の取り扱い

※2012年9月時点の税制をもとに改訂しています。

必要経費に算入も可能 判断のポイントは事業的規模かどうか

私はアパート等の貸し付けを行っているのですが、アパートの未収賃貸料が回収不能となってしまいました。
この回収不能な未収賃貸料というのは貸し倒れ損失として計上することができるのでしょうか。

回収不能な未収賃貸料を貸し倒れ損失として計上することができるかどうかについては、その不動産の貸し付けが、事業として行われているか否かが問題になってきます。結論から言うと、事業として不動産の貸し付けを行っているのであれば、回収不能となってしまった未収賃貸料は、その回収不能となった年分の必要経費となります。

事業的規模で不動産の貸し付けが行われている場合に、未収となっている賃貸料が回収不能となった際には、貸し倒れ損失としてその回収不能となった年分の必要経費に算入することができます。しかし、その不動産貸し付けが事業的規模で行われていない場合、回収不能となった未収賃貸料を貸し倒れ損失として必要経費に算入することはできません。この場合、収入に計上した年分にさかのぼり、その回収不能の所得がなかったものとなります。今回のご質問の場合には、まず事業的規模であるかどうかを判断する必要があります。

1. 事業的規模の判断

事業的規模かどうかについては、社会通念上、事業といえる程度の規模で行われているものか否かによって実質的に判断します。具体的にいいますと、建物の貸し付けについては、次のいずれかの基準を満たしていれば事業として行われているものとします。まず建物の貸し付けについてですが、アパート・マンション等に関しては、賃与することのできる独立した室数がおおむね10室」以上であること。独立した家屋の貸し付けについてはおおむね5棟以上であれば事業的規模と判断されます。また、賃貸用の駐車場の場合には1部屋と考え、50台以上であれば事業的規模と判断されます。(表1参照)

2. 事業的規模の優遇措置

事業的規模で貸し付けを行っている場合には、このほかにもいくつか優遇措置があります。(表2参照)
【参考】
表2以外で、事業として不動産の貸し付けを行った場合と、そうでない場合での所得計算上の相違点として、固定資産の取壊し・除却があった際の処理が主なものとしてあげられます。固定資産の取り壊し・除去等の資産損失については、事業として不動産の貸し付けを行っている場合には全額必要経費となりますが、そうでない場合には、その年の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額を限度として必要経費とされます。

3. 注意点

ただし、貸し倒れ損失を計上する際に特に気をつけなければいけない点があります。それは「回収不能」と一言で言ってもこの言葉の持つ意味が非常に広いという点です。ただ単に賃貸料の回収が滞っているというだけですぐに貸し倒れの処理ができるわけではありません。家賃の滞納があるからといって勝手に回収不能と判断し、損失計上してしまうと大変なことになってしまいます。所得税法上、貸倒損失として必要経費に計上できる回収不能な未収賃貸料というのは、債務者の資産状況、支払能力等から判断して、その全額を回収できないことが明らかな場合等に限られます。その際、相手の資産の状況や債務超過の状況がわかる決算書などが必要となる場合があります。これは、なにも未収賃貸料に限った話ではなく、取引先に対する売掛債権等に関しても同様のことがいえます。貸し倒れの処理を行う場合には、どういった根拠に基づいてその処理がおこなわれたのか、税務上厳密な判断が必要となりますので、農協の職員さんや、専門家等に相談することをおすすめします。

(表1)
  • アパート・マンション等の場合→貸付できる室数がおおむね10室以上であること。
  • 独立家屋の場合→おおむね5棟以上
  • 貸し駐車場の場合→50台以上
(表2)
内容 事業的規模 事業的規模以外
未収賃貸料の貸倒損失 当期の必要経費に算入が可能 当期の必要経費にすることはできない
青色申告特別控除 65万円・10万円のいずれかの控除 10万円の控除のみ
青色事業専従者給与 適用あり。家族に給与の支払いが可能 適用なし。家族に給与の支払いが不可能
資産損失の必要経費算入 全額経費とすることが可能 その年の不動産所得の金額を限度
 

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