グリーンライフ知って得する税金の知識バックナンバー

分割でもめた相続の問題点

※2012年9月時点の税制をもとに改訂しています。

父が亡くなり、相続税の申告をすることになりました。現在遺産分割協議を進めている最中なのですが、兄弟間でもめてしまい、申告期限内に遺産分割が決定しそうにありません。もし、期限内に分割が決まらなかった場合、相続税の申告をするにあたって何か問題はあるのでしょうか。

遺産分割をいつまでにしなくてはならないという決まりはありません。しかし、相続税の申告期限内に遺産分割が決まらなかった場合、相続税の計算上不利になることがあるので注意が必要です。今回は上記の質問にあるように、兄弟等でもめてしまい、期限内に遺産分割が決まらなかった場合の問題点、注意点について解説していきたいと思います。

 相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から、10ヶ月以内に被相続人の住所地を所轄する税務署に行うことになっています。原則として、被相続人から取得した財産について遺産の分割をし、各相続人の取得部分を確定して提出期限までに申告・納付をしなければなりませんが、今回の質問にあるように遺産分割が決まらないためそれができない場合があります。

 たとえ相続財産の分割が決まらない場合であっても、上記の期限までに申告をしなければならず、未分割であるということで期限が延びるということはありません。そのため相続した財産の全部または一部が未分割である場合には、その分割されていない財産を、各相続人などが民法に定める相続分に従って財産、債務を承継したものとして相続税の計算をし、申告・納税を行うことになります。

 その後、分割協議が終わり次第、下記のように申告することになります。

  1. 分割の決定により、1回目の申告時より税金が多く出た場合
    → 「修正申告書」を提出して税金を納付。
  2. 分割の決定により、1回目の申告時より税金が減った場合
    → 「更正の請求」を提出し、1回目に多く払った税金の還付を受ける。
  3.  

 期限内に分割が決まらなかった場合、以下に挙げるような制度の適用を受けられない場合があるので注意が必要です。

A:配偶者の税額軽減の特例

B:小規模宅地の評価減の特例

C:農地の納税猶予の特例

D:物納

  • A:配偶者の税額軽減の特例

相続税を計算する際、配偶者には「配偶者に対する相続税額の軽減」という特例があります。配偶者の相続分が法定相続分(または1億6000万円のどちらか多い方の金額)以下である場合には、配偶者に相続税はかかりません。(詳しくはグリーンライフ7月号をご覧ください。)しかし、分割が決定していない場合には、この特例の適用は受けられません。 

  • B:小規模宅地の評価減の特例(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)
     相続または遺贈によって取得した財産のうち、被相続人または被相続人と生計を一にしていた親族の事業(不動産の貸付を含む。)に使用されていた宅地や、または、居住用として使用されていた宅地等で建物や構築物の敷地として使用されているものについて、それぞれ限度面積までの部分を減額できます。これを小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例といいます。
     この特例の適用は、申告期限内に適用を受けようとする宅地等についてその分割協議書写しを含む書類や所定の明細書を添付した申告書を税務署に提出しなければ受けることができません。
  • C:農地の納税猶予の特例
    農地の納税猶予の特例とは、農業を営んでいた被相続人から、農業の用に供されていた農地等を相続等により取得した農業相続人が、その農地等において引き続き農業を営む場合には、一定の要件下で相続税を猶予するというものです。  この特例は申告期限までに適用を受けようとする農地を取得し、かつ農業経営を始める等の要件を満たさなければ受けられません。そのため、申告期限までに分割が決定していなければならないのです。  また、この特例は農業経営を継続するための猶予制度ですから、農業相続人が死亡した場合など、一定の事由に該当しない限り免除されません。また、譲渡や農地以外への転用、または農業経営の廃止等、農業を営まなくなった場合には、利子税とともに相続税を納付しなければなりませんので、農業を続けていく心構えが必要といえます。
  • D:物納
    物納とは読んで字のごとく、延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合において、納付を困難とする金額の範囲内で、一定の相続財産を金銭に代えて納めることをいいます。
    制度上、収納される時までに分割が決定していない相続財産の物納は、原則として認められていません。よって、明らかに物納による納付が有利な場合であっても適用が不可能となります。
     これらの制度はいずれも期限内に分割が決まらなかった場合、その適用は受けられませんが、申告期限から3年以内に分割が決定し、その旨の届出書(申告期限後3年以内の分割見込書)を提出する場合には、AとBの特例については遡って受けることが可能です。
     また、3年以内に分割が決まらなかった場合でも、「遺産が未分割であることについて、やむを得ない事由がある旨の承認申請書」を、提出期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月以内に相続税の申告書を提出した税務署長に対して提出すれば、AとBの特例については遡って適用を受けることが可能です。しかしCとDについては遡って適用を受けることはできないので注意が必要してください。
     また、相続した財産を申告期限後3年以内に売却した場合、相続税の取得費加算の特例を受けることができますが、分割協議が長引いた場合、この特例の適用も受けられなくなります。

 

上のように申告期限までに遺産分割が決まらなかった場合には、何かと手間がかかってしまいますし、相続税上不利になるということも十分起こりえるのです。特に農家の方たちにとっては、Cの納税猶予の特例を受けられるのと受けられないのでは、税額が大きく変わってきます。
  したがって期限内に分割を決定するのが一番良いといえるでしょう。お金がからむものですから、そう簡単に問題が解決するわけではないかと思いますが、遅くとも申告期限後3年以内には遺産分割を決めるのが相続税上有利といえます。
  今回取り上げたような問題を防止するためにも、生前に遺言を地元の農協に相談して、作成しておくと良いでしょう。

 

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